スタプラ! star plus one

『スタプラ!』キャラクターエピソード

叶ゆりあ 後編

ゆりあとのレッスンの日々が続く。

エリス
「わ〜〜〜い、お昼だ〜〜〜♪」
ゆりあ
「何と力強い、それでいて純粋さを感じさせる立ち居振る舞い……」

ゆりあは、食いしん坊な真白エリスが食堂へ駆けていくのを見て、感心しきり。

琴寝
「お兄ちゃ〜ん、待ってよぉ〜〜〜」
ゆりあ
「こちらは裏表のない、天使のように純真な……出会う人はみな我が師。わたくしも見習って、常日頃から、身心ともに美しくあらねばなりませんね」

そうして、朗読の授業で実技試験に挑むのだが——

ゆりあ
「クラムボンは……あぁ……かぷっ、かぷっ……んふっ、お笑いになって……」

何を見て学んだのか、「美しく」というのを、妙な方向に勘違いしてしまったようだ。
ものすごくセクシーな音読に、教室中が赤面してうつむいてしまう。
ゆりあ
「やりましたわ、旦那さま! もう勘弁してほしいから合格、だそうです。ご親切に録音もして下さったそうですから、お父さまにも聞いて頂きましょうか?」

それは、突然のオファーだった。

ゆりあ
「新作水着の発表会、ですか?」
十萌
「モデルを探しに来た水着メーカーの方が、ゆりあちゃんを気に入ったみたいで……人前で肌を見せるお仕事は、さすがに難しいですよね?」

じっと考え込んでいたゆりあは、決意に満ちた目を上げて言う。

ゆりあ
「わかりましたわ、この依頼、お受けいたします」
十萌
「ゆりあちゃん」
ゆりあ
「恥ずかしくはありますが、いつも大切にして頂いている旦那さまのためですもの。勇気と誇りを失わず、堂々と立ち振る舞えれば、父も分かって下さるはずです」

ありがとうと言うと、ゆりあはこちらの手を取って、

ゆりあ
「きみがため、ころもをぬいで、ふくなみだ。この叶ゆりあ、妻として女として、見事耐えてみせますわ」
光貴
「ちっ、あいつら、本物の夫婦みたいにいちゃつきやがって……」
ファルセット
「覗き見はお勧めいたしかねます」
光貴
「うるさいな。ファルセット、アンドロイドであるお前なら、プロポーションや魅力でも叶ゆりあに勝てる。僕のバディである、お前こそが至高。新作水着発表会に出演し、上には上のナイスバディがいる事を見せつけてやれ!」
ファルセット
「バディとナイスバディを掛けたダジャレでしょうか? イマイチ面白みに欠けると思われます」
光貴
「いちいちツッコむなと言ってるだろうが」
ファルセット
「それに、私がビキニを着ると、見えてはいけない部分まで見えてしまいます」
光貴
「何? 電池ボックスのフタとか、アレとかアレか。こういう時には、アンドロイドも頼りないな……なら、こういうのはどうだ?」

新作水着の発表会本番——

光貴
「ふふふ……そろそろだ。叶ゆりあ、地獄のショウタイムへの歩みを進めるがいい。あと、3メートル、2メートル、1メートル……」

観客全員がゆりあに見とれていたその瞬間、水着の肩紐が切れてしまった!

ゆりあ
「あ……ああ……」

ざわつく観客を後に、ゆりあは胸を隠しながら舞台裏に駆け戻る。
そして、辞世の句を残して失踪してしまった!

星華学院の屋上にて——

ゆりあ
「もう夜……皆はまだ、わたくしを探しているのでしょうか。雨まで降り始め……なかなか自決できずにいるわたくしを、天も急かしているよう……さようなら、お父さま、旦那さま……」

短刀胸に突き立てようとしたゆりあの腕を、間一髪のところで掴んだ!

ゆりあ
「だ、旦那さま!」

皆さまの前で恥をさらして汚れた体になってしまったわたくしは、もはやどなたにも嫁ぐ資格がありません。そんなことを言ってうつむくゆりあを、必死になって説得する。
資格がないなんて言わないでくれ。たとえ何があろうとも、叶ゆりあというかけがえのない存在に、いつまでもそばにいて欲しいのだ。
……言葉だけでは足りない。
だから、雨に濡れた体を強く抱きしめた!
ゆりあ
「ああ、旦那さま……とても幸せな、夢を見ているようです……」

文化祭の前日。ゆりあの前に、光貴とファルセットが現れた。

光貴
「おやおや、叶ゆりあ。新作水着の発表会では、実に気の毒だったな」
ゆりあ
「お気遣いありがとうございます」
光貴
「ミスコンのステージに立つんだろう? 同じことが起きなければいいなあ」
ゆりあ
「……」
光貴
「クククク……ところで、水着の紐が切れた瞬間の写真が手元にあるんだが……」

光貴がデジカメを見せた途端、ゆりあは得意の合気道で光貴を押さえ込み、そのデジカメを取り上げた!

光貴
「あだだだだっ! わわわ、わかった! 脅したりして悪かったよ。ど、どうだ、叶ゆりあ。それなら今からでも、バディを僕に乗り換えないか? 上保家の財力とコネクションを使って、最短距離でトップスターに……」

ゆりあは光貴を離して、居住まいを正す。

ゆりあ
「ファルセットさん、あなたも日頃から、ずいぶんと苦労されているのでしょうね」
ファルセット
「……」
ゆりあ
「わたくしは、決して脅しには屈しません。夫婦の絆はお金で購うことは出来ぬもの。愛は何よりも強いのです」
光貴
「綺麗事を。それならなぜ、お前の大事な旦那さまはここにいない。文化祭が近づくにつれて、姿さえ見せなくなったじゃないか」
ゆりあ
「それは……」

その時、二人の前に飛び込んで、ある物をゆりあに手渡した。
今まで手配に奔走していたが、何とか間に合わせられたのだ。
ゆりあ
「これは……まあ! 文化祭の公式パンフレットの表紙に、わたくしが……ポスターや文芸部発行の雑誌にも……コンテストに出場するわたくしを助けるために、精いっぱい尽くしてくださったのですね……」

ゆりあは喜びのあまり抱きついてくる。

ゆりあ
「ああ、わたくし、とうとう運命の方を見つけました」

そして、ミスコンの本番——
「愛の力で守られている」と言うゆりあは、ステージに立つや、堂々たる振る舞いで観客を一人残らず魅了していく。

叶ゆりあ

司会
「ミス・星華学院グランプリは、叶ゆりあさん!」

ゆりあはマイクの前に立ち、父親もいる観客席に向けて喜びを語る。

ゆりあ
「身に余る光栄、本当にありがとうございます。この栄誉は、舞台袖にいらっしゃるバディに捧げます」
鎧武者
「ゆりあ、立派になったな……」
ゆりあ
「その方こそ、尽くし尽くされ、いずれは結ばれる……いいえ、もう結ばれた旦那さま」
鎧武者
「ううっ、認める! そこまで言うなら認めるぞ!」
ゆりあ
「濡れた体で抱き合った夜のことは忘れられません」
鎧武者
「!?」
ゆりあ
「わたくしが欲しいとも言って下さいました。時には、この身をムチで打っても下さるのです」

とんでもない打ち明け話にざわつく観客席で、ゆりあの父が席を立つ。
抜き身の刀を手にして。
ゆりあ
「旦那さま、こちらです!」

出会った時と全く同じシチュエーションで、舞台裏の小さなスペースに身を隠す。
確かにあの夜、ゆりあの雨に「濡れた体」を抱きしめた。そばにいて「欲しい」とも言ったし、ムチで打つというのは、頑張れと「ムチ打つ」という意味だろう。
すべて事実には違いないのだが、なぜもっと誤解を招かないような言い方が出来ないのだろうか……。
当のゆりあは、愛おしそうに微笑んでいて、

叶ゆりあ

ゆりあ
「こんな苦労くらい、何でもありませんわ。夫婦ですもの……ね?」

叶ゆりあ編・おわり

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海鴎琴寝前編 /後編坂田凛々子前編 /後編ファルセット / /
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