スタプラ! star plus one

『スタプラ!』キャラクターエピソード

卯月花音 後編

公園での出来事以来、花音は驚くほど変わった。
子役に代わる新しいイメージを模索しようと相談している時も、ふと目が合うと、幸せそうに微笑みを浮かべる。

花音
「ダンスで格好良さをアピール、ですよね? えと、振り付けは……」
凛々子
「おおお〜、うちにも振りつけ教えてくんない? 今日はうちのバディがお休みなんよ〜。みんなを悩殺するようなレッツダンシンをひとつ……」
花音
「ちょっと! 私のバディさんを取らないでください!」
凛々子
「じ〜〜〜っ」
花音
「な、何ですか?」

花音は凜々子に見つめられて頬を赤らめながらも、体を寄せて腕を絡めてくる。

凛々子
「私のバディさん、ねえ。ふ〜ん、ふ〜ん、ふ〜〜〜ん」

突然の雨に濡れた時は、

花音
「ほらほら、拭いてあげますから、じっとしててください。ほんと、私がいないとダメなんですから……」

階段で足を滑らせてしまったこともある。

花音
「ひゃっ!」

間一髪で抱きとめると、

花音
「……」

そのまま離れようとせず、抱きついたまま、目を閉じて胸に顔を埋めているのだった。

十萌
「花音ちゃん、朗報ですよ! この前、受けそびれたオーディション、特別にもう一度チャレンジ出来ることになったんです!」
花音
「え?」
十萌
「あちらのプロデューサーさんが決めあぐねてるって聞いて、バディさんが花音ちゃんのために頭を下げにいってくれたんです。感謝しなくちゃですね」
花音
「バディさん……」

花音は、うっとりとしたまなざしで呟くのだった。

花音
「……かっこいい……」

そのオーディションにも見事に合格!
花音は本当に絶好調だ。表情も、以前とは別人のように明るい。
精神的な状態が良くなったため、もともと持っていた才能を、いかんなく発揮できるようになったのだろう。

花音
「バディさん! あの、これに挑戦してみてもいいですか?」

花音が手にしているのは、大人気アニメ『スパイシーキュアキュア』の劇場版声優オーディションの案内だ。

花音
「色んな人が集まる、すごいオーディションになると思いますけど……OKですか? やった!」

オーディションのエントリーに来たアニメ製作会社で、事件は起きた。

花音
「わあ、グッズやポスターがいっぱいですね!……あっ」
みなせ
「あっ」

人気美少女タレント・如月みなせと鉢合わせたのだ。

みなせ
「あら、花音。おひさし〜。何か聞いたんだけど、星華学院の学生にまで落ちぶれちゃったんでしょ?  かわいそ〜」
花音
「……」
みなせ
「ママもそう思うでしょ?」
みなせママ
「もちろんよぉ。みなせちゃんは、こうならないようにママが守ってあげるからね。さあさあ、次のお仕事の前に、ケーキでも食べに行きましょ」

二人は歩いて行きながらも、聞こえよがしに話している。

みなせ
「びっくりだよね、花音もオーディションに出るなんて」
みなせママ
「みなせちゃんの方がず〜っと実力あるし、受かりっこないのにねえ」
みなせ
「だよねだよね! それに見た? 一緒にいた、あの冴えないやつ」
みなせママ
「あの子は誰からも構ってもらえない可哀想な子だし、背後霊とかじゃないかしら?」

拳を握りしめ、うつむいている花音。
心配して見ていると、大きく深呼吸して、元通りの明るい顔を上げるのだった。

花音
「大丈夫ですよ、バディさん。さ、全力で頑張りましょう!」

一次、二次、三次……花音もみなせも厳しい審査を勝ち抜き、ついに最終オーディションまでたどり着いた。

みなせ
「あら、花音。あんたも残ったの? ふ〜ん、途中であきらめて、さっさと帰ればよかったのに」
花音
「……」
みなせ
「子役の頃から言ってたでしょ? あんたみたいにクソ真面目なだけで御機嫌取りもできないバカ、目障りだって。ね、ママもそう思うでしょ?」

みなせママは、ひたすら審査員たちに媚を売っている。

花音
「私はもう、ひとりじゃない。心から信じてくれる人がいる……」
みなせ
「はあ?」
花音
「愛の力、見せてあげます!」

そうして最終オーディションが始まった!
花音とみなせの直接対決。
媚びを売るような演技のみなせに対し、花音は堂々と自分の世界を表現。
誰の目から見ても、結果は明らかだった。

花音
「バディさん、やりました! 合格です!」

大喜びで飛びついてくる花音を抱きとめて、頭を撫でてやる。

みなせ
「うえ〜ん、ママ〜」
花音の父
「花音、よくやったな」
花音
「お父さん、来てくれたの!?」
花音の父
「ああ。そちらの方にもお礼を言おうと思ってな。娘のために、ここまで頑張ってくれて……」
花音
「あのね、お父さん。私、この人と結婚する!」
花音の父
「お、おい……」
花音
「前にも言ったじゃない、結婚するつもりで家まで行ったって。私、本気なんだから!」

そして花音は、みんなが見ている前で、頬に堂々とキスをした!

花音
「私、星華学院に来て良かった……バディさんっていう、心から大切にしてくれる、大好きな人に出会えましたから」

ざわつき、慌てる一同。
うろたえる父親もお構いなしで、

花音
「バディさんのために、早く大人になって、もっともっとステキになりますね!」

嬉しそうに言ったかと思うと、もう一度、頬にキスをするのだった。

卯月花音

卯月花音 編・おわり

真白エリス前編 /後編篠之森真夜前編 /後編卯月花音 / /
柏木ノエミ前編 /後編叶ゆりあ前編 /後編織部あやね / /
海鴎琴寝前編 /後編坂田凛々子前編 /後編ファルセット / /
真白エリス臨海学校編柏木ノエミ臨海学校編海鴎琴寝臨海学校編

Page Top

ノベルページトップ