スタプラ! star plus one

『スタプラ!』キャラクターエピソード

篠之森真夜 後編

真夜は一週間後、光貴との対決に向けた決意のほどを聞かせてくれるという。
それまでの間、ゲームの中で「黒魔導師クランリアーナ」と親しくなり、勇気づけてあげることができるかもしれない。

クランリアーナ
『そこの旅人さん、加勢するわ! エターナル・フォース・メガフレア!』

さっそくモンスターに襲われていたところを、真夜が助けてくれた。

クランリアーナ
『よかった、無事ね。あなた初心者さんでしょ? はじまりの森だからって、油断してたら危険よ。結構強いモンスターも出てくるんだから』

こちらの正体には気付いていないようだ。
キーボードでお礼を打ち込むと、

クランリアーナ
『お礼なんていいわ。どんな強敵を前にしても、どんな困難に直面しても、決して逃げない。それが……』
真夜
「黒魔導師の、誇りだから……」

ゲームの中のイベントで、20人もの仲間を集め、テュポーンドラゴンという強敵に挑むことになった。
ここでも黒魔導師クランリアーナが積極的に手を貸してくれたおかげで、見事にイベントを成功させることが出来た。

クランリアーナ
『どう? 初心者さん。いえ、もう相棒と言った方がいいかしら。誇り高き黒魔導師は、迷える者を見捨てることは決してしないの。これからも私を信じて。信じていつでも背中を預けられる、それが相棒ってやつじゃない』

そう、真夜は誇り高き黒魔導師。今は信じて待つのだ。
そうして、一週間が過ぎた——

学院の裏山に、大きな菩提樹がある。
戦う覚悟が決まったら樹の下に来てくれと、真夜と約束していた。
もうすぐ約束の時間だが、真夜の姿は見えない。
やはり来ないのだろうか……そう思った瞬間、

——ガサガサッ!

真夜
「あっ、あわわっ! ヘ、ヘビ!」

茂みから真夜が飛び出してきた!

真夜
「……ハッ! ククククク……来たか、我と共に戦うために……わ、笑うなっ! は、早めに来て、隠れてたとかないからっ! ほ、誇り高き黒魔導士は、まよ、迷える者を、み、見捨てることは決してしないのだ!」

来てくれてありがとうとお礼を言うと、

真夜
「ふぇ? わわわ、私は、べ、別にっ……!」

この時を境に、真夜は以前よりずっと楽に話せるようになっていった。
レッスンにも熱心に取り組んでいる。
真夜には演技の才能がある。何とかして、それを伸ばしてあげたい。

真夜
「……」
十萌
「真夜ちゃん、そのポスター、気になるのですか?」
真夜
「べべ、別に…!」
十萌
「新作ゲームの主演をかけた公開オーディション、真夜ちゃんならぴったりだと思ってたのです。はい、台本。ちゃんと読んでおいてくださいね」
真夜
「ちょ、ちょっと……!」
十萌
「エントリーも、任せてくださいなのです!」

最初は戸惑っていたものの、真夜はオーディションに向けてやる気充分だ。
ゲームの中でも、台本に自己流のアレンジを加えて登場人物になりきっている。

クランリアーナ
『ソサエティ・ギア、フルスロットル! この鞭の嵐を受けた者は、身が粉になるまで私のために働き続けるのだ! フーハハハハハ!』

オーディションの前日、事件は起きた。

真夜
「……? な、無い! 台本……確かにここに置いたのに……」
光貴
「オタク女、探しものか? まあ、ボクには関係ないが……明日のステージ、何があっても逃げずに出てこいよ」
ファルセット
「よろしければ、レーダーでお探ししますが?」
光貴
「ファルセット! その必要はない、行くぞ!」

もちろん、真夜は逃げずにステージに現れた。
まるで登場人物が乗り移ったかのような真夜のアフレコに、観客席は異様な熱気に包まれる。

真夜
「ソサエティ・ギア、フルスロットル! この鞭の嵐を受けた者は、身が粉になるまで私のために働き続けるのだ!」
十萌
「真夜ちゃん、すごい……」
真夜
「(バディが用意してくれた代わりの台本、ゲームの中で私がなりきってたのと同じ言い回しに直されてる……もしかして、あの初心者さんって……)」
光貴
「ちっ、一次オーディションは、あいつらも合格か」
ファルセット
「最終確認です、本当によろしいのですね?」
光貴
「もちろんだ。オタク女が最終オーディションに参加するどころか、部屋からも二度と出られないようにしてやる」
ファルセット
「それでは……」
生徒A
「ほら、あいつだよ、あいつ……」
生徒B
「あ、そうなんだ……」

真夜と学院の中を歩いていると、すれ違う人すれ違う人がみんな、ひそひそと噂話をしてくる。
どうしたんだろうと不思議に思っていると、

十萌
「たたたた大変です、真夜ちゃん! 真夜ちゃんの個人情報が流出してるんです!」

十萌さんがスマートフォンで見せてくれた掲示板を見て、真夜は真っ青になっている。

十萌
「いったい、どうして……」
真夜
「ば、バディ……」
十萌
「?」
真夜
「さ、最初に一度、バディは私の、スマホを見てるし……ゲームの中でしたみたいに、もしかして、こっそり……」
十萌
「そんな……あ、真夜ちゃん! 待ってください、真夜ちゃん!」

真夜は走り去っていってしまった。

そして、最終オーディションの日。
真夜が主演のミュージカルを上演する予定なのだが、開演の時刻が近づいても姿を見せない。
このまま信じて待つしかない。
それが今、相棒に出来るただ一つのことなのだ。
刻一刻と時は過ぎ、主演の姿がステージにないまま音楽が流れはじめる。
もうダメかと思ったその時——
うつむいていた観客の一人が立ち上がり、上着を脱ぎ去った!

篠之森真夜

真夜
「待たせたな! 上保光貴よ、偉大なる黒魔導師クランリアーナに小細工は通用しない! 聞くがいい、漆黒の歌を! 震えるがいい、純然たる闇のミュージカルに!」

客席は総立ちとなり、熱狂の渦に飲み込まれる。
そして——

司会
「グランプリは篠之森真夜さん!」
光貴
「くっ……覚えていろ。いつか必ず、お前達から何もかも奪って叩き潰してやる」
真夜
「個人情報流出の件、やはり貴様が黒幕だったようだな」
ファルセット
「否定はしません」
真夜
「フッ、何度でもかかって来い。その度に退けてくれよう。この黒魔導師クランリアーナは負けはせぬ。輪廻の絆で結ばれた、我がバディがいる限りはな!」

【件名:すまなかった】
本文:本番まで姿を隠していて。でも、ああするしかなかった。妨害工作が今度こそ成功しているように見せかけないと、次は何をしてくるか分かったものじゃなかったし。それに……。

真夜
「ぜ、絶対、待っててくれると、思ったから……」

真夜も最初から、信じていてくれたのだ。

真夜
「だって、ししし、信じて、い、いつでも、背中を預けられる……それが……」

相棒ってやつ。

真夜
「ち、誓えっ! この先もクランリアーナの名にかけて、裏切ることはないと!」

何だか告白のようにも聞こえるが、今は気にしないでおこう。
二人の間にはもう、輪廻の縁以上の絆が生まれている。

篠之森真夜

篠之森真夜 編・おわり

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