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Visiting Production 会社訪問

【第32回/2014年11月号】ビデオフォーカス

岡村美里(以降 岡村):今日はよろしくお願いします。これまでCG会社さんを訪問することが多かったのですが、初めて制作会社さんを訪問することになりました。まず知りたいのは、制作会社さんはどういった仕事をする会社なのですか?

坪ノ内俊也(以降 坪ノ内):そうですね、弊社(ビデオフォーカス)のやっていることは主にTVドラマなのですが、映像作品の企画立案から完パケまでを行っています。この小説を映像化したい、こんな話をドラマにしたら面白いんじゃないかということを映像作品の企画として考え、制作します。

岡村:企画から制作までですか。

坪ノ内:TV局の関連会社ではなく独立系の制作会社なので、企画から行っています。弊社はテレビドラマを主にしていますので、企画をテレビ局などに提案し、採用されると制作準備に取りかかるということになります。そして、まず自分の思いが最初に形になるのは企画書です。企画書は企画の顔ですので、興味を引く形に作成します。

中村桃子(以降 中村):ちなみにどのくらいの割合で企画は通るものなのですか?

坪ノ内:野球の打率が3割で凄いと言われますが、企画は10本出して1本通るかどうかの世界ですかねぇ。そして何十個考えて1つの企画にすることもあるので、企画を通すことはとてつもなく高いハードルだと思っています。ただ、企画の成り立ちはいろいろありますから、弊社からというものや、TV局が企画されたものをこちらで制作することもあります。

岡村:そんな大変な企画が通った後、どこまでが制作会社さんの仕事になるのですか?

坪ノ内:企画の次に制作準備に入って一番大事なのは、脚本作りですね。台本は設計図だと言われたことがありますが、台本によって多くの人間が動きますので、どうすれば視聴者が面白く見てくれるか、どうすれば予算内で物語の世界を映像化出来るかを考えながら脚本作りを進めます。そして、台本が出来たら、キャスティング、スタッフィング、ロケーション選定などを行い、撮影に入ります。撮影が終了したら、編集、MAなどの仕上げ作業を行い、作品を完成させます。映像作品制作の全てを管理して完成させるのが制作会社の仕事です。

中村:クレジットに、制作進行、制作担当、AP、Pとありますが、仕事の違いは何でしょうか?

坪ノ内:全責任負うのはプロデューサー(P)ですよね。企画立案から完パケまでの全ての責任を任される役です。予算管理から、撮影の安全といったことも、作品のまとめ役として行っていきます。そして、アシスタントプロデューサー(AP)はあくまでもアシスタントですので、プロデューサーの補佐的な立場です。ですが、仕事をしていく中でキャスティングや撮影現場での俳優のケア、編集スケジュールの管理などを責任持って取り組まなくてはならないことが出てきます。

中村:一番分からないのが、制作担当と制作進行の違いなのですが、、、

坪ノ内:制作進行は、撮影における細々としたことをサポートしていく立場で、ロケ弁当の発注から、ロケ地図の作成、ロケ現場での雑務を引き受けています。制作担当は、撮影、ロケーションなども含めて予算の管理と、撮影現場での責任者という立場です。監督の考えや、脚本の世界観をふまえながらロケハンを行います。

岡村:会社に入社したら、制作進行、制作担当、AP,Pの順番に昇進するのでしょうか?

坪ノ内:一番下が制作進行なのですが、そこで撮影のことを知り、次に制作担当になります。ただこのポジションから段々責任も出て来て、私自身ロケ場所が決まらなかったらどうしよう、放送に間に合わなかったらどうしようというプレッシャーはありました。そしてAPは、撮影だけでなく完成までの管理責任になってきます。その後いろいろ経験した後、面白い作品を創るために、Pは企画から完成、そして評価まで含めて責任ある立場となっていくのが流れだと思います。

岡村:勤務時間はどうなっているのでしょうか?

坪ノ内:企画などを考えたりしている時期や、制作準備に入っていない時期は、普通の会社員と同じで、月〜金勤務で、退社時間も遅くならないです。ひとたび制作準備、撮影、編集に入ると、曜日、時間に関わらず常に仕事があります。夜遅くまでの打ち合わせや撮影、編集などは当たり前になっていきます。生活のリズムはなくなってくるので大変と言えば大変ですが、仕事を経験していくと、力の抜きどころもわかってきてバランスが取れてきますけどね。

中村:私も撮影の経験があるのですが、早朝開始で深夜終わりとかあったのですが、PかAPさんはずっと現場に張り付いているのですか?

坪ノ内:基本的にはいますねぇ。撮影は楽しいことだけでなく、様々なトラブルや危ないことなどいろいろ起こるので、可能な限り撮影現場にいるようにはします。ただいるだけになることもありますが、責任者なのでいるようにします。そういう時にスタッフと話すようにしていますが。

中村:とても忙しそうに思いますが、制作に必要な人材は何ですか?

坪ノ内:元気とか、体力があるとか、それと妄想力ですかねぇ。なんだかんだで一番大事なのは体です。雑草のような丈夫さというか、色々なことに耐えれることが大事なので。それと、色々なことを妄想できる人です。こうしたら面白いんじゃないか、もしこうなったらどうなるんだろうと考えられる人です。なんでも面白がれるというのも必要です。過酷で大変な状況でも、こんなに大変なのってなんか笑っちゃうよねと考えるとか。まじめすぎないことも大切ですよ。

岡村:妄想してそれを楽しめることって大切なんですね。

中村:ちなみに妄想力ってどうやって養うのですか?

坪ノ内:難しい質問ですねぇ。ただ、なんでも面白いと思って興味をもつことが大切なのかもしれませんね。

中村:一番影響を受けたものは何ですか?作品なのか、ものなのか、メディアなのか?

坪ノ内:そもそもTVが好きだったんですよ。ネットのない時代だったので、TVから情報をもらっていたし、そしてドラマでもバラエティでもなんでも見ていましたね。それでTVの仕事をしたいと思いました。

中村:制作会社はどういった経緯で入社が可能なのでしょうか?

坪ノ内:自分は、大学の求人案内に求人募集があったので普通に応募して採用されました。制作会社が合同で就職説明会を行っていたり、随時ホームページで求人募集していることもあります。

中村:資格は何が必要ですか?

坪ノ内:資格がいらない職業だと思っています。経験もなくスタートできると思います。ただ、こういった仕事に興味がないとそもそも無理ですけどね(笑)。

中村:例えば、面接試験の時に、どうやって想像力を見極めるのですか?

坪ノ内:弊社の場合は、面接と小論文があります。ちょっと古い話ですが、私の場合の小論文のテーマが「風を感じた時」だったんですよ。そこで書いた内容は野球の話でした。当時近鉄バッファローズがリーグ優勝をかけた試合を見に行っていたんですが、最後満塁になってバッターが逆転満塁ホームランを打ったんですよ。その球に風が見えたみたいなことを書いた記憶があります。そんな発想がよかったと後から言われた記憶があります。
※ 2001年 優勝決定戦。北川博敏選手の代打逆転サヨナラ満塁ホームランにより、近鉄バッファローズは12年ぶりの4回目のリーグ優勝を決めた。

岡村:逆に、今採用側だと思いますが、どういった人材を採用したいと思いますか?

坪ノ内:そうですねぇ、ちょっと人と物の見方が違うと採用したくなるんじゃないでしょうか。一概に言えないというか、ルール化はできないですけど、そう感じます。その辺は、仕事をして出会った多くの人に感じる共通点です。

中村:最後に、これまでに印象に残った作品は何でしょうか?

坪ノ内:『赤い糸の女』(2012)の時に、はじめてプロデューサー職になったのですが、その時責任がある立場を意識させられたというか、スケジュール通りに、そしていい作品としてオンエアさせないといけないプレッシャーを感じました。

岡村:私、『牡丹と薔薇』(2004)観ていましたが、これはどうだったのでしょうか?ブームになりましたよね?

坪ノ内:これも印象に残る作品でしたね。まだ下っ端の頃でしたけど、ブームになっていく過程が見られたというか、感じられたのはよかったです。話題になることってこういうことなんだな、ってちょっといい経験させてもらったと思いました。じわじわ火がついて、盛り上がったら最後までそのテンションで行くみたいな感じでした。取材も後半増えましたし、ロケ現場で「何の撮影?」と言われた時に、『牡丹と薔薇』なんですが、と言うと「見てるよ、見てる、いつ放送なの?」って反響が凄かったです。ただ、撮影は大変でしたけどね。撮影は早朝から深夜までやっていましたから。

岡村:私、『ロボサン』も観ています!あのプリクラの絵とか斬新で面白いと思いました。

坪ノ内:ありがとうございます。弊社の制作する作品の中ではいつもとは違うテイストです。ただ自分としては好きなジャンル、「アイドルとロボット」ですので楽しくやらせてもらっています。あと、自分が「私立恵比寿中学」のファンになってしまいました(笑)。みなさんにもぜひ見てもらいたい作品です。

中村:最後、もうひとつ質問いいですか?これまでに影響された小説とか漫画は何ですか?

坪ノ内:そうですねぇ、自分の中に藤子不二雄さんの漫画の影響は強いかもしれません。SF、空想科学なので、ありえないことを想像し具現化して見せてもらったことが原体験としての影響があるかもしれませんね。

岡村:これからも面白い作品お願いします。楽しみにしています。

坪ノ内:けっこうまじめに話しちゃったと思うのですが(笑)、、

岡村:知らない世界だったので、大変勉強になりました。今日はありがとうございました。

中村:楽しいお話、ありがとうございました。

INTERVIEWER:
岡村美里(ワオワールド)
中村桃子(俳優)
EDIT&PHOTO:
Enhanced-Endorphin
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VIDEO FOCUS
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東京都新宿区若葉2-7
TEL : 03-3353-3371  FAX : 03-3353-3630
http://www.videofocus.co.jp
業務内容
テレビドラマ、ドキュメンタリー、劇場用映画、DVDソフト、ネット配信ドラマなど、あらゆるメディアの映像コンテンツを手がける制作技術プロダクションです。
プロデューサー 坪ノ内俊也
クレジットリスト
■TVドラマ
『牡丹と薔薇』2004 THK(制作進行)
『冬の輪舞』2005 THK(制作担当) 『家が遠い』2005 CX(制作担当)
『林家三平ものがたり』 2006 TX(プロデューサー補)
『名古屋嬢の恋』2008 THK(プロデューサー補)
『弁護士・茜沢翔子の人生相談承ります!』2008 ABC(プロデューサー補)
『示談交渉人 ゴタ消し』 2011 YTV(プロデューサー補)
『正義の証明』 2011 TBS(プロデューサー補)
『北海道警察・巡査の休日』2011 TBS(プロデューサー補)
『戦国男士』2011 TVK(制作プロデューサー)
『女三代 如月法律事務所 〜完黙する女〜』2012 TX(プロデューサー補)
『赤い糸の女』 2012 THK(プロデューサー)
『天国の恋』 2013 THK(プロデューサー)
『甲殻不動戦記 ロボサン』2014 TX(プロデューサー)

■映画
『劇場版 怪談レストラン』2010(制作)

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