想い人・令子に告白し、玉砕してしまった松太郎。もう、オレには相撲以外なにも残っていない…。思い詰めたまま迎えた本場所では、しかし、その傷心が逆に功を奏して無敗の快進撃！　あと一勝で十両昇進・全勝優勝という所までやってくるのだった。そして、いよいよ千秋楽（最終日）がやってきた。最後の相手は、以前にも優勝を賭けて戦った事のある因縁のライバル…、松太郎と同じく、これまでを無敗で勝ち進んできた天才力士・近藤だ。ところが、時間いっぱいになって土俵へ現れた松太郎は、全身キズだらけアザだらけの満身創痍。ズタボロで、今にも気を失って倒れそうな有様であった！

怪我の原因は昨夜の出来事にあった。なんと松太郎は、闇討ちにあったのだ。首謀者は、同じ雷神部屋の兄弟子・竜ノ川であった。自分と同じ十両へ、松太郎が昇進してくるかもしれない。竜ノ川はそれが許せず、河川敷で一人になった松太郎を仲間たちと共に取り囲んだのである。だがコレは、失恋でヤケクソになった松太郎にとって渡りに船であった。不穏な空気を察知して止めに来た田中を振り払い、多勢を相手に大立ち回り！　大乱闘の末、松太郎は全員を返り討ちにしてしまうのだった。その後、負傷により気を失うも、先ほど目を覚まし、足を引きずりながら国技館へやって来たという訳である。

そして松太郎と近藤、二人のライバル対決がいよいよ…はっけよい、のこった！　力の松太郎と技の近藤、繰り広げられる凄まじい攻防。激しい張り手、ぶつかり合い、技の応酬。その末に、とうとう近藤渾身の下手投げが炸裂した！　だがその瞬間、松太郎もまた近藤の回しを取っての投げ返し！　両者、投げの打ち合いによる限界寸前のせめぎ合い…！　果たして軍配はどちらに！？　と、その瞬間、松太郎の目に客席の様子が飛び込んできた。そこには松太郎の想い人・令子の姿があった。令子は松太郎の事がどうしても気になって、千秋楽の様子を見に来てしまっていたのだ。

しかし令子は「もう貴女から卒業させてあげなさい」という母の言葉に従って、取り組みを最後まで見ることなく去っていってしまった。間の悪い事に、松太郎はその瞬間を目撃してしまったのである。直後、これまでの気迫が嘘のように、力を失ってしまう松太郎。そのまま崩れ落ち、松太郎は敗北してしまうのだった…。そして数日後、松太郎は竜ノ川らとの暴力事件が明るみとなって、遂に雷神部屋を破門となってしまった。だが悲壮感はなく、その顔はむしろ晴れ晴れとしたものであった。明日は明日の風が吹く。同じく部屋を出た田中と共に、松太郎は新たな一歩を踏み出すのだった。