Visiting Production 会社訪問
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【第31回/2014年9月号】株式会社トランジスタ・スタジオ

網倉理奈(以降 網倉):今日はよろしくお願いします。まず、こちらのトランジスタ・スタジオさんはどういった経緯で立ち上げたのでしょうか?

宮下善成社長(以降宮下):1996年頃まで、私は株式会社シグマという会社で働いていました。2人でCG制作をしていましたが、その同僚がハワイに転職が決ったことにより1人になってしまったんです。その時の経理の女性から、「これからどうするの?会社作りなさいよ!そして私を雇いなさいよ!」と言われたのがきっかけで、「じぁ作りますか」ということで設立することにしました。

岡村美里(以降 岡村):その女性の一言でですか?

宮下:そうですね。もうずいぶん長い付き合いになりましたが、今も弊社の経理として元気に働いてもらっています。

岡村:すごいですねぇ。そうなりたいです!

中村桃子(以降中村):トランジスタ・スタジオさんのパイプラインを紹介していただけますでしょうか?

秋元純一(以降秋元):ベースは Mayaを使っています。その上で分業していまして、モデリング班とセットアップ班、そしてアニメーション班、フィニッシュ班に分けています。基本Mayaを中心に作業していますが、仕事によっては3ds MaxやHoudiniを使用しています。ただ HoudiniはMayaとは別のラインで制作する場合もあります。またモデリング班では、ZBrushやModoなど、主要なソフトウェアはほぼ全て使って制作しています。

岡村:どういった基準で使い分けているのですか?

秋元:弊社の仕事の流れが2つありまして、受注業と自社のオリジナルコンテンツを制作する業務があります。受注の場合は、クライアントさんベースでソフトウェアを使い分けています。納品のデータ形態に応じて作業ツールも分けています。もう1つの自社コンテンツもしくは弊社で企画したものは、映像納品になりますので、使いたいツールを使って制作しています。

岡村:アーティストさんが好きなものを使えるというイメージなのでしょうか?

秋元:基本のメインツールはMayaになっていまして、特殊な作業が必要な場合にHoudiniを使うというのをベースにしています。その上でいろいろなツールを使いこなしているというイメージです。そして合成はAfter EffectsかNukeになります。

中村:そんなにたくさんのツールが使えるのは素晴らしいですね。他社さんとは全く違う気がしました。

秋元:日本では、自分しか使っていないのでは?と思うようなツールも使っています。

岡村:それは何ですか?

秋元:ドイツの商品で、GeoControlというソフトウェアがありまして、地形をシミュレーションしてくれるものです。他のソフトウェアと違うのは、地形の山とか起伏を作ったうえで、川に水を流してくれるのです。川に流す堆積物までシミュレートしてくれる凄いソフトウェアです。
(※現在は、WorldCreatorという名前で販売中)
http://www.cloddy.com/index.php/wc-product

岡村:日本の代理店経由で購入しているのでしょうか?

秋元:直接ドイツから購入しています。なかなか良いツールを見つけるのは大変なのですが、探すのが好きというか、探し当てるのは楽しいですよ。

中村:どうやって探すのでしょうか?

秋元:海外のフォーラムからの情報など、WEBからの情報です。

中村:でも失敗した経験もあるのではないでしょうか?

秋元:だいたいは使いこなせていますが、使用範囲を社内に留めています。と言いますのも他のスタジオさんが使っているわけではないので、データを外に渡せない為、どうしても社内で完結する使い方になってしまいます。また、そういったソフトウェアはサポートがなかったり、変なバグがずっと残っていたりするので、その点は泣かされます。ただそのバグありきというか、そういうソフトウェアだと思って使うとそれはそれで楽しいです。

岡村:なんとなくわかる気がします。私のパソコンにもフリーのソフトウェアがいっぱい入っているので。いろいろ試したい気持ちはわかります(笑)。他に特殊な使い方をしているものはありますか?

秋元:基本的には Mayaで作業していますが、輪郭線だけは 3ds Maxのpencilというプラグインでレンダリングしたりとか、ピンポイントにこのツールを使おうという形で制作しています。

岡村:ツールの違いというものは、ボールペンとサインペンみたいな、味として違うタッチになるのでしょうか?

秋元:最終的なクオリティが全然違いますよね。

中村:ソフトウェアが多ければ、パイプラインが混雑するのではないのでしょうか?

秋元:パイプラインというものは、モノとモノを繋ぐものなので、その繋ぎ方をうまくやらないとその距離が長くなりパイプライン自体が複雑化してしまい到達点は遠くなります。しかしモノとモノが多くあってもパイプラインが整備されていれば渋滞も起こらないし、スムーズに行きます。そこは凄く制作期間に関わってきます。弊社はPVとかの短期の仕事も多いので、パイプラインという土台をしっかり構築して、瞬発力を出せるようにしています。また、作業の自動化や人為的なミスをなくすようなシステムにするためにも、ここ数年パイプラインの整備に力を入れています。

網倉:ファッションブランド「燐」を立ち上げた理由はなんでしょうか?
(「燐」:http://www.rin-work.com)

宮下:1995年に「貝殻の標本」という企画をやりました。それは「死装束の展覧会」をやろうという企画で、死装束のデザイナーに、ミュージシャンが音楽を創り、弊社が映像を提供して、ホールでイベントを催しました。それが結構評判となり、TV番組の「トゥナイト」に出演したり、NHKの「ドキュメントにっぽん」の中で「旅立ちのドレス」というドキュメンタリー番組も制作されました。また熊本の現代美術館でも展示され、何度も再演しているうちに、1999年福岡の西鉄ホールの杮落しとしてファションショーやりませんか?というオファーを頂きました。そこではさすがに「死装束」のファションショーを行うわけにはいかないので、「BIRTH」という洋服のファションショーをしましょうと提案し、そこで「燐」のブランドを立ち上げました。ただ、ブランドを立ち上げ、洋服も作る人はいるのですが、会社がないということになり、弊社の中にファッションブランドを立ち上げたのが経緯です。母体は福岡になります。

岡村:ブランドコレクションを見させていただいたところ、凄く和風だと感じたのですが、これはやはりスタートが「死装束」だからでしょうか?それともコンセプトである「個性的でデイリーに着れる」というところからなのでしょうか?

宮下:簡単に言いますと、デザイナーの趣味ですね。ポップアップショップと言って常時店舗は構えていなく、2週間とか短期間で場所を借りて急に店が出来るという形態をとっています。

齊藤奈津子(以降齊藤):メンズもありますが、メンズとレディースの比率はどのくらいなのでしょうか?

宮下:レディースが99%です。夏と冬に福岡、東京、京都の3ヶ所でお店を出します。

網倉:元素の名前とHPにあったのですが、ブランド名を「燐」にした由来は何でしょうか?

宮下:自ら火を熾すという意味で「燐」としました。

網倉:かっこいい名前だと思います!

宮下:ありがとうございます。

齊藤:CG部門とファッション部門との連携というのはあるのでしょうか?

宮下:ファッションの新作コレクションを発表する時に、CGで動画を制作して、その動画をYoutubeにUPしたり、会場で流したりしています。あと、イベントの時に搬入搬出に人手が足りない時は、お手伝いすることはあります。また、モデルとしてCGスタッフが登場することもありますよ。

岡村:素晴らしい賞歴をお持ちですが、トランジスタ・スタジオさんに入社したいと思う人はどうすればよいのでしょうか?

宮下:元気があれば!(笑)

岡村:いろいろなツールが使われていますが、それらをある程度使えないと入れないのでしょうか?

秋元:それはないですね。むしろ会社で教えますので大丈夫です。なので元気があれば!

中村:これまでにこれは苦労したなぁという作品はありますか?または記憶に残っている作品は?

秋元:私が入ったのは10年ほど前だったのですが、5年前頃、出向していたディレクターの森江康太が戻ってきた頃でもあり、amazarashiというアーティストの「夏を待っていました」という作品のPVを社長に内緒で作業しました。アニメーションを森江が担当し、私がエフェクトを担当し、社外アーティストを含む4人で作業をしました。日中は通常業務、夜はPVということで2〜3週間作業しました。その後、賞を頂いた時に社長にやっていたことを初めて話しました(笑)。

一同:(笑)

秋元:社長も「あ、そう」って感じではありましたが、トランジスタ・スタジオにはそういった自由な雰囲気があります。その次の「クリスマス」というPVは、会社で受注したのですが、アニメーション1人、エフェクト1人、合成1人、モデリング+雑務に数名で150カットくらいこなしました。それは今までの仕事の中で一番キツかったですね。ただこのことがあった為に、次回作はもっとこうしたほうがいいという意見が出てきて、パイプラインの構築が始まりました。

中村:逆境をバネにしているって感じですね。

宮下:もともとCG制作とグラフィックデザインとファッションデザインの三本柱で始めましたが、今では各部署独立独歩に近い形になっています。またCGチームは毎年オリジナル作品を作り続けています。これからも新しいことに挑戦し続ける「トランジスタ・スタジオ」でありたいと思っています。

岡村:すごく魅力的な会社に感じました。今日はありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

INTERVIEWER:
岡村美里(ワオワールド)
中村桃子(俳優)
網倉理奈(東京フィルムセンター映画・俳優専門学校2年生)
齊藤奈津子(東京フィルムセンター映画・俳優専門学校2年生)
EDIT&PHOTO:
Enhanced-Endorphin
株式会社トランジスタ・スタジオ
株式会社トランジスタ・スタジオ
Transistor Studio Co.,Ltd
〒170-0002
東京都豊島区巣鴨3丁目3番地1号 Y.Yビル 401号
TEL : 03-3949-6682  FAX : 03-3949-6682
http://www.transistorstudio.co.jp
https://www.facebook.com/transistorstudio
業務内容
1. コンピュータ・グラフィックスを使用した映像の企画制作
2. 広告、出版物などのグラフィックデザイン
3. コンピュータ・グラフィックスの教育と教材作成
4. 展示会などにおけるデモンストレーション要員の派遣
5. 洋服、靴、鞄のデザイン、製造、販売(ファッションブランド「燐」)

1997年に設立。MayaによるキャラクターアニメーションやHoudiniによるビジュアルエフェクトを得意としています。
毎年、オリジナル作品を制作しSiggraphにも入賞。
少数ながら、社名トランジスタのごとく、“ 小さくても高性能”“ 小回りの利く”制作会社として信頼を得ています。
ファッションブランド「燐」(http://www.rin-work.com/)も活動中です。
受賞歴
■HIDETAKE TAKAYAMA「Express feat. Silla ( múm ) 」Music Video
(トランジスタ・スタジオ オリジナル制作作品)
SIGGRAPH 2013 入賞
SIGGRAPHasia 2013 入賞
Film Skillet ノミネート
北九州デジタルクリエーターコンテスト2013 大賞受賞
VFX-JAPANアワー ド 2013 ノミネート
札幌国際映画祭 JAPAN OFF THEATER 入選
CGアニメコンテスト 佳作

■amazarashi 「夏を待っていました」Music Video
(モデリング、アニメーション、コンポジット、エフェクト担当)
SIGGRAPH ASIA 2010 Animation Theater 入選
3DCG AWARDS 2010 一般アニメーション部門 最優秀賞受賞
第14回 文化庁メディア芸術祭 エンターテイメント部門 優秀賞受賞
DOTMOV FESTIVAL 2010 入選
onedotzero adventures in motion 2010入選

■amazarashi 「クリスマス」Music Video
(モデリング、アニメーション、コンポジット、エフェクト担当)
アヌシー国際アニメーションフェスティバル2011入選
第15回 文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品入選
2010年度 SPACE SHOWER Music Video Awards ALTERNATIVE VIDEO部門ノミネート
ショートショートフィルムフェスティバル& アジア 2012 ミュージックShort部門ノミネート
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