interview インタビュー
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日本にフルCG アニメは根付くのか?

識者に聞く、和製3DCG アニメーションの未来
【第10回/2013年1月号】
松浦裕暁(アニメーション・プロデューサー)

日本におけるフル 3DCG アニメーション制作への理解と振興を目指す本連載。今回ご登場いただくのは、サンジゲンの代表取締役で、プロデューサーの松浦裕暁氏だ。松浦氏が中心となり2006年に設立された 株式会社サンジゲン は、日本の伝統的な作画アニメの手法と 3DCG アニメを巧みに融合させた制作スタイルによって、大きな存在感を示す組織へと急成長した。2012年10月27日(土)には、キャラクターをフル3Dで表現した立体劇場長編映画 『009 RE:CYBORG』 を発表し、さらなる飛躍を目指すサンジゲンを牽引する松浦氏に、同社が目指す未来や日本のCGアニメの可能性について語ってもらった。

【聞き手:野口光一(東映アニメーション)】
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熟練アニメーターこそが組織成長の必須要素

東映アニメーション/野口光一(以下、野口):このインタビューが公開されるのは2013年の初頭なので、今日は2012年のフル CG アニメをふり返りながらお話を伺いたいと思っています。2012年は、キャラクターを 3DCG で表現した 劇場用アニメが数多く公開(※1) されました。その中でも、『009 RE:CYBORG』 はとりわけ注目された作品だったと感じています。そして作品の知名度が上昇していくのにつれて、サンジゲンのブランド力が高まった年でもありました。「やっぱりサンジゲンの仕事か」「セルルックの CG アニメと言えば、サンジゲン」といったコメントをネット上で見かける機会が増えたように思います。


※1:劇場用アニメが数多く公開
2012年公開の下記7作品では、ほぼ全てのキャラクターが 3DCG で表現された。 『ドットハック セカイの向こうに』(1月公開)、『ドラゴンエイジ-ブラッドメイジの聖戦-』(2月公開)、『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』(7月公開)、『放課後ミッドナイターズ』(8月公開)、『アシュラ』(9月公開)、『バイオハザード ダムネーション』『009 RE:CYBORG』(共に10月公開) ※本連載2012年5月号(大口孝之氏)の年表もあわせてご参照ください

松浦裕暁(以下、松浦):そう言っていただけると嬉しいです。数年前までは誰も知らなかった会社ですからね(笑)。

野口:サンジゲンを設立なさったのが 2006 年で、『009 RE:CYBORG』の公開が2012年。この短期間で、これほど加速度的な成長を遂げた CG プロダクションは前例がないように思います。最初に 3DCG で人間のキャラクターを表現したのが『咲-Saki-』(2009) ですよね? キャラクターが麻雀牌を囲むシーンで、牌に加えて、それを操る手元も3DCGで表現なさった。全身を表現したのは 『はなまる幼稚園』(2010) のセルパッケージ向け特典映像『ぱんだねこ体操』が先駆けでしょうか。

松浦:もうちょっと早い時期に 3DCG でキャラクターを表現できるようになると思っていたのですけど、結果的に 6 年半もかかっちゃいましたね。実は『咲-Saki-』の前、2008年の時点で完全オリジナルのフル CG アニメをつくっているのですよ。とある TV アニメ企画のプレゼンテーション用の試作映像で、キャラクターは全部セルルックの 3DCG で表現して、動きはリミテッドアニメにしました。こういう CG の使い方もありではないかと世の中に打ち出すつもりでいたら、リーマン・ショック の影響などで企画が通らなかったのです(苦笑)。当時のサンジゲンは2、30人程度の小さな集団で、大したキャパシティはなかったけれども、きっと表現できるという確信がありました。ただし世の中に出さないことには誰も信じてはくれない。だから、ほとんど持ち出しで貪欲に映像をつくっていましたね。

野口:3DCG を使うなら、モーションキャプチャを活用して効率化を図る、あるいはフォトリアリスティックなどの 3DCG らしいルックにするといった発想の方が自然だったと思うのです。サンジゲンの前身であるフリーランス集団の「三次元」を起ち上げたのが 2003 年ですよね。ちょうど 『ペコラ』(2002〜2003) や 『APPLESEED』(2004年) が制作されていた時期ですが、ああいった 3DCG らしさを活かす方向に進もうとは思わなかったのでしょうか?

松浦:当時の僕は結果を出していなかったので根拠はなかったのですが、あの方向性はちがうなと感じていました。日本の作画アニメは60年近い歴史があり、完成された制作システムをもっています。多くのユーザーがいて、しっかりとした市場がある。そこで認められる作品をつくらなければ、CG アニメの市場を広げることはできないと思ったのです。

野口:だからセルルックで、しかもリミテッドアニメを表現する方向に舵をきったと。「松浦さんは勇気があった」と語る方が業界には多いのですよ(笑)。その勇気はどこから湧いてきたのか、なぜ勝算があると考えたのでしょうか?

松浦:まず、僕たちが小規模な集団だったからでしょうね。だから思いきった挑戦ができた。そして当時のアニメ業界での 3DCG は補助的な使われ方に留まっていたので、作品のメインであるキャラクターを表現することにこだわりました。モーションキャプチャやシミュレーションに関しては、それによって効率を上げることはすごく大切ですが、良い画をつくるための効率化なのか、単純に生産性を上げるための効率化なのかは、ちゃんと見極める必要があると思っています。

野口:たとえ生産性が上がったとしても、良い画をつくる効果がなければ導入する必要はないと?

松浦:コンピュータに自動計算させれば、とりあえず早くつくることは可能かもしれません。ですが、本当につくりたい画を実現できるのかどうか、僕は疑問があります。例えば10人のアニメーターがいれば、10通りのつくりたい画があるのです。十人十色の画を早くつくれる方法は、シミュレーションではないと思います。アニメーターの熟練度を上げていくことの方が、実は重要なんじゃないかと。

野口:『009 RE:CYBORG』を制作できたのは、優秀な CG アニメーターを育成してこれたからということでしょうか?

松浦:そうですね。10名強のベテランアニメーターの存在は非常に大きかったです。作画アニメの業界には優れた先輩方が沢山いらっしゃいますから、常に作画から学ぼうという姿勢でやってきました。最初の頃は接点を持てる機会が少なかったのですが、僕らが作画の側にいき、「我々はこんなことをやりたいのですが、先輩方はどんなことをなさっているのですか?」と尋ねて、一緒にやってくださる方を探してきました。つくりたい画を実現するには、その方がむしろ効率が良いだろうと思ったわけです。そんな姿勢でやってきたことが、成長の大きな要因ではないでしょうか。

色々な仕事をやって当然という姿勢でいてほしい

野口:先ほどアニメーターの熟練度を上げていくことが重要とおっしゃいましたが、アニメーターの育成は日本の CG 業界全体に共通する課題だと感じています。どこの CG プロダクションに行っても「アニメーターがいない」という話を聞きます(苦笑)。サンジゲンはオリジナルの教科書を作ったりして、アニメーター育成に力を入れている印象があります。例えば新人を採用した場合、どういった仕事からやらせるのですか?

松浦:新人には手始めとして、マニュアルに沿った作業をやってもらいますね。具体的に言うとレイアウトです。シーン内に自動車のモデルを配置するだけの作業とか、ヘリコプターを配置してローターを回すだけの作業とか。僕らは "止めアニメーション" と呼んでいるのですが、そういった簡単なアニメーションで慣れてもらいつつ、徐々に難しい作業に挑戦してもらいます。

野口:そういった、いわゆる「新人若手枠」の仕事というのは沢山あるのでしょうか?

松浦:大量にあります。僕らの仕事の約 6 割を占めている。だから新人若手の人たちは常に仕事がいっぱいです(笑)。もうずっと長い間、僕らはこのやり方を続けていますね。やりたいという人にはドンドン仕事をふって、成長できる環境を提供したいと思っています。

野口:最終的には、クリエイティブな仕事ができる熟練アニメーターに育ってもらうことを目指しているわけですよね。

松浦:もちろんです。ただ、それは教えられるものではないのです。作法は教えられますが、そこから伸びるかどうかは教育ではなく本人の問題です 。僕らが提供するチャンスを活かして、成長してくれるよう祈っているというのが正直なところです(苦笑)。

野口:例えば先輩の仕事を観察して学びとる、といった姿勢が必要なのでしょうか?

松浦:そうですね。本当にやりたい人は言われなくても自分で研究しますから。このアニメの何話の動きが良かったとか、見たものを何でも仕事に反映させようとする。結局、そういう人しか残らないのですよ。ただし簡単な仕事は大量にあるので、それを集中してこなすオペレーション担当の人と、よりクリエイティブな仕事を担当する人に二分していくかもしれません。それはそれでありだと思っています。

野口:この連載の2012年10月号で対談した『009 RE:CYBORG』プロデューサーの石井朋彦さんは、3DCG なら、動かす能力を磨くだけで作画のアニメーターと同じ仕事ができるとおっしゃっていました。だから 3DCG の導入は、アニメーターの間口を一気に広げる可能性があるのだと。

松浦:間口は広がっていくでしょう。僕らがアウトプットした作品が評価されるほど、この業界に来る人が増えると思っています。確かに作画アニメをやるよりも、CG アニメをやる方が効率が良いのですよ。今のサンジゲンには作画アニメ出身の CG アニメーターが何人か所属していて、『009 RE:CYBORG』でもすごく活躍してくれました。彼らはサンジゲンに来る以前に、作画のアニメーターを10年近く経験しており、作画監督や絵コンテ、演出ができるくらいの実力がある。1年くらい CG アニメを経験すれば、すごく良い動きを付けられるようになります。もちろん、誰もがそうだということではなく、3DCGをはじめとするデジタル技術に拒否感のない方であることが前提にはなりますが。

野口:CG 未経験の人が、1年でそこまで成長できるものですか?

松浦:できますね。その可能性があるんだから、みんなやれば良いと思っています(笑)。僕らのノウハウは全て教えますよ。そうやって作り手の人口が増えて業界が活性化すれば、チャンスが広がって僕らも助かります。サンジゲンの規模だから言える話かもしれませんが、CG アニメーターがちゃんと成熟して作品をつくれるようになれば、確実に作画アニメよりも儲かるようになります。僕は作画アニメの会社も経営していますが、作画アニメよりも CG アニメの方が断然効率が良い。

野口:分業の仕方が効率化や生産性に影響しているのでしょうか。作画アニメだと動画・原画・彩色に分業されている仕事を、CG アニメーターは1人でこなして一人前ですからね。

松浦:サンジゲンではなるべくセクションを分けずに、アニメーターたちが色々な仕事を担当できる組織づくりを心がけています。今後組織を大きくしていくと、もう少し細かい分業が必要にになると思うので、その時に備えているつもりです。周囲のセクションの仕事を理解していないと分業制は絶対に成り立たないですからね。

野口:サンジゲンのワークフローは、モデリング・アニメーション・撮影……以上! みたいな形で非常にシンプルですよね。日本の CG プロダクションでは、ある程度の規模になるとセットアップやライティング、エフェクトなどのセクションをつくり、海外の CG プロダクションのスタイルを模倣する、というのが一般的ではないかと感じています。

松浦:そこまでの分業化は時期尚早ですね。100人や200人の規模で実践しても、逆に非効率だと思っています。作品ごとにモデリング担当、リグ担当って決めることは大賛成ですが、組織として仕事を完全に分けるとダメになるような気がしてならない。まず、スタッフの意識が凝り固まって、セクションナリズムが浸透してしまう。良いものをつくれなくなるという恐怖心があります。

野口:海外の 3DCG アニメーションや VFX のスタジオは、1,000人単位でつくっていますからね。

松浦:そうですね。1,000人になったら、今の体制では管理しきれない。もっとわかりやすい枠組みをつくらないと無理だと思います。でも今の規模で「僕の仕事じゃない」と言われてもね(苦笑)。日本のアニメの予算は海外ほど潤沢ではないですから、人も資金も効率よく使わなくちゃいけない。いつでもちがう仕事ができる状態にしておいてほしいのです。ただし人によって得意不得意はありますから、そこはディレクターが采配する。得意だから任せる、あるいは新しいことに挑戦してほしいから、これをやらせてみるといった具合にね。「自分はアニメーターだからアニメーションしかやりません」というような考えには固執してほしくないと思っています。「今は手が空いているから、ちょっと手伝おうか?」といった姿勢が重要です。

野口:松浦さんが考えている組織は、昔の日本の CG プロダクションに近いですね。ゼネラリストの集団が良い感じのバランスで仕事を分け合っている。それとは対照的に、セクションが多くなって分業化が進むほど、ちょっとした作業にもたくさんの人とお金が必要になりますからね。

松浦:大変ではあるけれど、色々な仕事をやらなくちゃいけないのは当たり前なんだという意識でいてほしい。この仕事を 1 年や 2 年で辞めるなら、どこかのセクションでやりたいことをやれば良い。そうではなく、僕らがこの先20年、30年と仕事を続けたいなら、色々なことをやっていけるという気持ちが必要です。これはアニメーター個人だけではなく、サンジゲンという組織自体にも言える話です。そのつもりでやらないと、この先何十年と組織を継続させることは絶対にできないと思います。外部から見れば、6 年半で劇場作品をつくったという実績は目覚ましいのかもしれませんが、僕は全然そう思っていない。そんな気持ちでいたから、今日のサンジゲンがあるのではないかと感じています(笑)。

野口:個人も組織も、色々なこと、新しいことに挑戦するという姿勢でいたから、良い仕事やチャンスに恵まれ、着実なアウトプットをしてこられたのでしょうね。

松浦:僕はあまり営業をせず、いただく仕事を先から詰めてきただけですけどね。ただ、なるべく成長のチャンスがある仕事をやりたいと思っています。常に新しいアイデアがあるので、それを 1 個ずつ確実にやっていきたい。それから、基本的にリテイクは全部お引き受けするというスタンスでやっています。「できません」とは言いません。

野口:素晴らしい。でもリテイクや後出しが多い相手の要求を素直に受けていくと、疲弊してしまうのではないですか(苦笑)。

松浦:それでも、制作進行の方とは絶対に喧嘩をするなとディレクターたちには厳命しています。僕は接客商売もフリーランスもやってきたので、生きていく大変さはわかっているつもりです。発注側からすれば「やっていただいている」、受注側からすれば「やらせていただいている」、そういう気持ちでいることが、特に日本社会の中では大切です。海外では通用しませんけどね(苦笑)。

野口:でしょうね。海外のプロダクションはほとんど残業もしませんし、平然と「できません」って言いますよね。

松浦:でも僕らは、リテイクが出れば直すのは当たり前だという気持ちでいます。もちろんできないこともあります。無理なものは無理だと主張します。でも、できるのにやらないという姿勢は、自分自身にすら言い訳できないですよね。そういった積み重ねが評価され、次の仕事の土台になると信じてやってきました。ある日突然「俺たちサンジゲン!『009 RE:CYBORG』つくります!!」なんてことが起こるわけはないですから(笑)。気持ち良く仕事ができて、しかも上手くて、適性価格でやってくれるところにしか仕事は流れないのですよ。

海外市場を視野に入れ全国規模の組織を構築したい

野口:京都スタジオ(※2) はどういう意図で設立されたのですか?


※2:京都スタジオ 2012年7月に設立した、サンジゲンとライデンフィルムの京都スタジオのこと。

松浦:全国規模でスタッフを集めるためです。京都はその第 1 号で、今後 7 ヶ所につくりたいと考えています。1 年くらい前から計画してきたことですね。

野口:東京に出て来られない、地方の優秀な方を発掘するためですか?

松浦:そういう意図もあります。加えて、リスクの低さも要因ですね。最初は海外スタジオの設立も考えたのですよ。2011年には毎月のようにベトナムに行って現地の状況を確認して、中国も検討しました。そうやって色々と検討していく中で、何で海外ばかりをみているのだろうと気がついたのです。

野口:地方という可能性があるじゃないかと?

松浦:そう。海外の前に、日本中からスタッフを集めるのが一番良いんじゃないかと。地方であれば月々のスタジオ維持費は数万円で済みますし、治安などのリスクは非常に低い。そこで僕と縁のあった京都出身のプロデューサーが中心となって、まずは第 1 号の地方スタジオを設立することにしました。

野口:スタジオの規模はどの程度を予定していますか?

松浦:地方は 1 ヶ所につき最大で50 人ですね。全国 7 カ所で350人、東京スタジオは650人まで拡張して、全体で1,000人規模にしたいというのが現時点での目標です。地方に関しては、管理が難しくなるので50人が上限だと思っています。

野口:それだけの人数がいれば、相当数のラインを併走させることできますね。

松浦:20ラインをつくってやろうと思っています(笑)。その内、1/2〜2/3は海外の案件にしたい。サンジゲンに加えて、ウルトラスーパーピクチャーズ全体で考えると、今後は海外の市場にも目を向けるのが必然だと思っています。日本市場向けの作品をつくることも大切ですが、海外でできる可能性があるのに実践しないのはおかしいだろうと感じています。常にチャンスはあるので、それを活かせる環境を整備したいのです。これからのアニメ制作は、CG・世界・マーチャンダイジングの 3 つが肝になるので、それらを総合的にやっていきたい。

野口:世界市場への展開は、日本のアニメ業界全体が抱える課題ですね。日本市場を主なターゲットにすることで存続していて、海外では思ったほど売れていないのが現状ですから。

松浦:海外に打って出る際のひとつの目標として、ピクサーと共同制作ができたら面白いなと思っています。12月中旬(2012年)にね、ピクサー社内での『009 RE:CYBORG』の上映会を実施したんですよ。

野口:それは凄い。日本のアニメ業界では、スタジオジブリ以来の快挙ですね。

松浦:ピクサーは、CG アニメをつくりたい人の多くが意識している憧れの存在ですからね。いずれは彼らと一緒に仕事をしてみたい。そうすれば、日本で CG アニメをつくっている人たちも希望を持てると思うし、楽しい経験ができるはずです。僕らは監督の作家性に応じた制作体制をとっているので、『009 RE:CYBORG』のようなリアルテイストから『はなまる幼稚園』のようなデフォルメまで対応できますし、カートゥーンテイストだってつくれます。海外のプロダクションと手を組む可能性は充分あるだろうと思っているのです。

野口:『009 RE:CYBORG』の場合は一部の制作を海外に発注したと伺っていますが、どのような作業を依頼したのですか?

松浦:ベトナムの SAO SANG DESIGN Co., LTD(※3) に背景モデリングやプロジェクションマッピング作業を手伝っていただきました。現地の社長さんとは何度もお会いしていましたし、すごく協力的で仕事も速かったですね。日本でつくる場合と比較しても、まったく遜色がありませんでした。


※3:SAO SANG DESIGN Co., LTD
『009 RE:CYBORG』制作に参加した ラークスエンタテインメント のベトナム子会社である、ホーチミン市に拠点を置くアニメーション・スタジオ。 http://saosangdesign.com

野口:海外のスタジオに依頼する場合、画づくりにおけるニュアンスのちがいが一番の問題になりますが、その点はいかがですか?

松浦:モデリングやカメラワークだけなら、大きな問題はないと思います。ただしアニメーションに関しては、僕らも伝えきれない部分が多いので当面は国内で制作することになるでしょうね。

野口:そうすると、今後はアニメーションを量産できる体制を国内に構築していくと?

松浦:そうですね。僕としては、フリーランスの CG アニメーターを増やすことは阻止したいのです。スタッフ管理ができないし、仕事の配分、方向性の統一、クオリティの維持、ブランディングなどもやりづらくなる。作画アニメの世界は大量のフリーランスに支えられているため、すごく苦労しています。そうならないために制作環境を整えて、効率良く組織的につくる体制を定着させていきたいと考えています。加えて、誰かがつくれるものは価値が下がっていくのが世の常です。そんな中でスタッフの待遇や制作環境を良くしていこうとすれば、新しいものを作り続ける必要がある。そのためにも、大規模な組織で立ち向かった方が良いのですよ。

野口:つまり、サンジゲンは次の時代の画づくりを始めているわけですね。それが世に出るのは2015年くらいでしょうか?

松浦:ええ。僕の中には次のイメージがあるので、それを実現したいと思っています。今のセルルックの CG アニメは作画の再現に留まっていますが、それだけでなく、作画では不可能な表現にも挑戦したいのです。ユーザーも新しい画を期待していると思いますし、アニメではあるけれど、作画ではできない発想の新鮮な画をお観せしたいです。

野口:その画を拝見できる日を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

松浦裕暁:Hiroaki Matsuura
1972年生まれ。福井県出身。株式会社サンジゲン代表取締役、株式会社 ライデンフィルム 代表取締役、株式会社 ウルトラスーパーピクチャーズ 代表取締役。1997年に上京し、デジタルハリウッドで3DCGを学ぶ。翌年からフリーランスとしてアニメ業界でのキャリアをスタートし、2002年にゴンゾへ入社。2003年よりフリーランス集団「三次元」として活動を開始。2006年にサンジゲンを株式会社化。2011年にサンジゲン・トリガー・Ordet をグループとするホールディングカンパニー、ウルトラスーパーピクチャーズを設立。2012年に手描きを中心とするアニメーション制作会社、ライデンフィルムを設立。プロダクション・アイジーとサンジゲンが共同制作した劇場長編映画『009 RE:CYBORG』(2012年10月公開)では、制作プロデューサーを務めた。
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INTERVIEWER : 野口光一(東映アニメーション)
EDIT : 尾形美幸(EduCat)、沼倉有人(CGWORLD)http://cgworld.jp
PHOTO : 弘田 充
LOCATION : サンジゲン
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