スタプラ! star plus one

『スタプラ!』キャラクターエピソード

ファルセット 後編

ファルセット
「マスター。光貴さまの情報によると、静香さま御提案のオーディションに合格できれば、お父さまを説得するのに充分だそうです」

感情を理解できないはずのファルセットのまなざしに、決意と覚悟がみなぎっている。

ファルセット
「ですから……」
十萌
「ファルセットちゃん。バディさんはもう、絶対合格すると決めているのです。十萌も手をつなぎます。ですから、走り続けましょう!」
十萌
「この前の講演を聞いて、学院内にもやる気を出した子がいっぱいなのです。そこで、しずちゃん……上保静香さんの提案してくれたオーディション、校内で事前選考をして、代表を決めることになったのですよ」
ファルセット
「はい……」
十萌
「ファルセットちゃん、バディさん、頑張りましょうね!」

だが、イオンテトライト電池は、不良品ですらもう一つも残っていない。
そのうえファルセットは、いつ倒れてもおかしくない状態なのだ。
今度倒れたが最後、二度と起き上がることは出来ないだろう。

光貴
「学内での選考とはいえ、かなりの強敵が相手になりそうだ。ファルセットの状態も……こうなったら、いつものように裏から手を回して……」

電話を掛けようとする光貴の手を、ファルセットが押さえた。

光貴
「何をするんだ! この状況で正々堂々なんて、何のために……」
ファルセット
「誇りのためです、ご理解ください」

そうして挑んだ学内選考。
ファルセットは見事に代表の座を勝ち取った!

学院長
「決まりじゃ。学院代表として、ファルセットを映画のオーディションに派遣する。もし合格できれば、歴史に名を残す快挙じゃ。全力を尽くすんじゃぞ」
花音
「ファルセットさん、おめでとうございます」
あやね
「あんたは、あたし達team.スピカの……ううん、星華学院すべての人の誇りだよ」
ファルセット
「あ……あ、りが……」
学院長
「どうしたんじゃ!?」
ファルセット
「と……う……」

ファルセットが倒れてしまった!

もう残りの電池はない。
ファルセットには、いよいよ限界が近付いていた。

ファルセット

ファルセット
「……マス、ター……私……を、オーディション会場まで、おぶって……行くのは……無謀、です……」

タクシーを呼ぼうものなら、オーディション会場ではなく病院に連れて行かれてしまうだろう。
ファルセットは重く、背負っていると歩くのがやっとだ。
それでも、あきらめたくない。
あきらめるわけにはいかない。
でも――
ここまで、なのか――?

「ファルセット!」

その時、声が聞こえた。

琴寝
「海鴎琴寝、約束を果たしに来たわ!」

見ると、琴寝を先頭に、星華学院のみんながいた!
何かあったら必ず助けてあげると言った、あの時の約束。
ファルセットが会場までたどり着けるように、車を用意するなど、力を合わせて準備を整えてくれたのだ!

光貴
「ファルセット、新品のイオンテトライト電池だ!」
琴寝
「ちょっと、もう電池は無かったんじゃないの?」
エリス
「それにどうしたの、その顔! ケガしてるよ!」
光貴
「なあに、電池工場の工場長に、最後に一つだけ作るよう“命令”した時にな」
凜々子
「それって、バレたらヤバイじゃん!」
光貴
「僕のことなど、どうでもいい。ファルセット、お前自身の未来のために、全力を尽くすんだ!」

そして、最終オーディションがはじまった。
最後まで残ったのは、ファルセットと静香の二人。
お互いに持てるすべてを、ステージ上で表現する。
見守る誰もが、ファルセットがアンドロイドであることを忘れた。
そこには確かに、魂と呼べるものがあったのだ。

司会
「合格は……」
十萌
「神様……!」
司会
「合格はファルセットさん! ファルセットさんです!」

わっと歓声が巻き起こった。

ファルセット
「マスター……」
静香
「ファルセット、負けたよ。おめでとう。光貴もやったじゃん!」
光貴
「ああ。だが……今までのイオンテトライト電池は不良品だったが、今回使ったのは新品の正規品。古いマスターである僕の記憶は、もうじきリセットされ、上書きされてしまう。僕のことは忘れてしまうだろう……」
静香
「光貴……」
光貴
「しかし、その方が、ファルセットにとってはいいのかもしれんな……」

ファルセットがオーディションに合格したという報せは、上保グループ全体を驚愕させた。
新型アンドロイドの開発計画は見直されることになり、イオンテトライト電池の生産ラインも、完全に復活することになった。
そして――
ファルセットの記憶が上書きされる、その時が来た。
手を取り合い、見つめ合っていたファルセットと光貴。
ファルセットの手から次第に力が抜けていき、ついに離れる。

ファルセット
「……」
光貴
「これで、僕の記憶は完全に消えた。新しいバディと二人、元気でやるんだな」

光貴がそう言って、背を向けた時だった。

ファルセット
「光貴さま」
光貴
「!」
ファルセット
「光貴さま……ありがとう……」

背を向けたまま去っていく光貴。
泣いていたのかもしれない。
見送っていたファルセットは、振り向いて微かに笑うのだった。

ファルセット
「さあ、行きましょう。新しい未来へ!」

ファルセット

ファルセット 編・おわり

真白エリス前編 /後編篠之森真夜前編 /後編卯月花音 / /
柏木ノエミ前編 /後編叶ゆりあ前編 /後編織部あやね / /
海鴎琴寝前編 /後編坂田凛々子前編 /後編ファルセット / /
真白エリス臨海学校編柏木ノエミ臨海学校編海鴎琴寝臨海学校編

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