スタプラ! star plus one

『スタプラ!』キャラクターエピソード

ファルセット 中編

ファルセットが学院内で孤立しても、十萌さんは変わらず気にかけてくれる。

十萌
「学院内は居心地が悪いのかもしれないですけど、外なら大丈夫なのですよ。十萌、レッスンできそうな場所を探してきたのです!」

一方――

光貴の父
「ファルセット?」
光貴
「パパ。ファルセットは学院で、少しずつ成長してるんだ。だからこの先も、イオンテトライト電池の生産を……」
光貴の父
「たかが機械に、なぜそんなに肩入れする?」
光貴
「機械って、そんな……」
光貴の父
「新型ができれば、お前の才能とやらも存分に引き出せるだろう。父としても、いつまでも息子に無駄なことをさせたくはない」
光貴
「……」
光貴の父
「お前も我が上保グループに、なるべく迷惑をかけんことだ。新型アンドロイドへの理解を深め、せいぜい宣伝に役立てるよう心がけるんだな」
ファルセット
「……」
十萌
「ファルセットちゃん、やっぱりどこか寂しそうなのです」
ファルセット
「私は寂しいのですか? 孤立しているマスターと光貴さまのことを、危惧してはいますが」
十萌
「みんなファルセットちゃんを、誤解しているのです……」

「そうだ!」と、十萌さんはひらめく。

十萌
「もうすぐ、文化祭のメインステージをかけたオーディションの予選があるのです。そこで二人が、他の人たちと同じように力を合わせて頑張ってる姿を見せれば、誤解も解けるかもしれません!」
ファルセット
「信用してくれる、ということでしょうか?」
十萌
「十萌の親友の静ちゃんだって、そうやってグランプリを獲って、今では超人気女優なんですから!」
ファルセット
「静ちゃん、上保静香さま。光貴さまの実姉です」
十萌
「そうそう、上保君の……って、ええっ! そうだったんですか!?」

不審がって事情を訊きに来た琴寝たちには、これまでの事情を丁寧に説明する。

十萌
「……そういうわけなんです」
琴寝
「ファルセットを助けるために、か。あんた達はどう思う?」
ノエミ
「本当の話……十萌は……嘘つきじゃない……」
花音
「困ってるのなら、放ってはおけませんね」
あやね
「あたしも同じ」
琴寝
「ま、そうよね。んじゃ、決まりだわ。この先、もしファルセットに何かあったら、あたし達が全力で助けてあげる」
十萌
「琴ちゃん……」
琴寝
「海鴎琴寝の約束よ。女に二言はないわ」
光貴
「ファルセット、うまくやっているようだな」
ファルセット
「私への周囲の評判も、改善傾向にあるようです」
光貴
「文化祭でグランプリを獲れば、絶好のアピールになるだろう。グループへの影響力を高めるため、僕の姉もゲストとして呼んである。頼んだぞ! 何としてでもグランプリを獲得し、その手に未来を掴み取るんだ!」

そして、文化祭のオーディション。
ファルセットは本来の実力をいかんなく発揮し、見事にメインステージへの出演を勝ち取った!

凛々子
「ファルっち、合格おめでと〜!」
ゆりあ
「わたくしからも、お祝いを申し上げますわ」
エリス
「さすがファルセットさんだね。負けちゃったけど、何かすっきりした気持ちだよ」
真夜
「ククククク……今は祝福しておこう……」

電圧低下のせいか調子の悪いファルセットを、真夜をはじめとするみんながサポートしてくれたから、合格することが出来たのだ。

ファルセット
「あ、あ……りが……」

ファルセットが倒れてしまった!

エリス
「ファルセットさん? ねえ、どうしたの? しっかりして!」
ゆりあ
「まあ! 息をしていませんわ! わたくしが人工呼吸をいたします!」
エリス
「電池切れかな。だったら早く入れ替えて……え、新しい電池は無いの? そんな……」

その後、保健室にて――

光貴
「何とか間に合ったな」
ゆりあ
「ファルセットさんは、ご無事なのでしょうか?」
光貴
「ああ。不良品の電池、最後の一個が残っていなければ危ない所だった」
エリス
「こんな事情があったのに、どうして話してくれなかったの?」
光貴
「海鴎琴寝たちには話したさ。それに、僕とファルセットは長いこと、君達の敵だったからな。だが、それも、もう終わりだ……」
十萌
「終わりって……」
光貴
「電池の切れていた時間が長すぎて、文化祭のためにレッスンしたメモリが全て消えているようだ。今からレッスンし直しても、グランプリは厳しいだろう……」
十萌
「そんな……」

と――

エリス
「敵なんかじゃないよ」

エリスが言った。

エリス
「私たちはライバルだけど、敵なんかじゃない。みんなで力を合わせて、ファルセットさんを助けられるように精いっぱい協力する。だから、最後まであきらめずに頑張ろ?」

そして、文化祭当日。
ファルセットはまだ、体の調子さえ戻っていない。
結局、メインステージへの出演は見送ることになった。

十萌
「ファルセットちゃんが出られていれば……」
「おーい、ともーっ! ともってばー!」
十萌
「その声は……静ちゃん!」
静香
「あはは、ともーっ♪ 元気にしてた? 学院はどう? 今度また、ともの家でお泊まり会やろうよ!」
十萌
「しずちゃん……」
静香
「どしたの?」
十萌
「しずちゃん、十萌は……十萌はね……」
静香
「……もう、ともは相変わらず泣き虫だなあ。私の胸で泣いていいから、何があったか話してみ?」

文化祭で特別講演をしてもらうため、卒業生である上保静香を、十萌さんが招いたのだ。

静香
「夢との距離は、夢見るだけじゃ、どんどん離れていくものです。だから、走り続けることを止めないでください。一人ではなく、仲間と手をつないでいれば、もっと速く、遠くまで走っていけるはずです」
静香
「そして、難しいと思っても、あきらめることなく、勇気をもってチャレンジすること。そうね、例えば……」
静香
「今度、私も受ける予定の大作映画のオーディション。みんなもチャレンジしてみるってのはどうかしら?」

十萌さんから話を聞いた上保静香が、閉ざされてしまった行く手を開いてくれたのだ。
聞いた瞬間、ファルセットもエントリーさせようと決めた。
これがファルセットを助ける最後のチャンスだ。

ファルセット 後編につづく

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