サイエンス

実験するときは大人といっしょにやろう

実験3  エコカイロ

エコカイロの材料

  • 酢酸ナトリウム(無水)----------8.0g
    水-----------------------------------4mL
    ヘアピン---------------------------1個
    袋------------------------------------1枚
  • 備考:温めるため、厚手のものを使用しないと融けて漏れます。
    ヘアピンは、所謂スリーピンと呼ばれるものです。(パチンと開くものです)

エコカイロとは?

  • エコカイロとは、お湯で温めることで何度でも繰り返し利用できるカイロです。
  • 普通のカイロのような化学反応ではなく、酢酸ナトリウムという物質の過冷却凝固熱を利用しています。

カイロが暖かいのはなぜ?

  • 物質に何か変化があるとき、それは必ず熱の出入りを伴います。つまり、周りを温めたり、冷やしたりします。
  • 普通のカイロは、鉄が錆びるときに発生するを利用して暖かくなっています。しかし、一度錆びてしまった鉄は簡単には元に戻せません。だから、普通のカイロは「使い捨て」なのです。

エコカイロはなぜ何回も使えるの?

  • エコカイロもまた、物質の変化時に生じる熱を使います。しかし、この変化は化学変化ではありません。ここで使っている変化は、「三態変化さんたいへんか」という変化です。この変化は、とても簡単に行ったり来たりすることができます。
  • なので、簡単に暖かくなる前の状態に戻せるのです。

三態変化って何?

  • 三態変化とは、物質が固体液体気体を行き来する変化のことです。
  • とても身近なものに、水蒸気の三態変化があります。
  • 今回は凝固(液体固体)の変化と、その時に生じる(凝固熱)を利用します。

凝固熱とは?

  • 凝固熱とは、液体が固体に変化する際に周りに放出されるのことです。簡単に言うと、氷を溶かすときに加える熱のです。
  • 固体液体にするとき、外部から熱を加える必要があります。0℃の氷0℃の水にするには熱が必要なのです。
  • では、液体固体になるときはどうでしょう。この変化は、上記の変化のちょうどです。つまり、熱の出入りになります。
  • どういう事かというと、液体固体になるとき、周りに熱を放出しているのです。
  • この熱を「凝固熱ぎょうこねつ」といいます。

凝固点と過冷却

  • 普段水を冷やして氷を作るとき、凝固熱は感じることが難しいです。なぜなら、凝固熱は出てきた瞬間に冷凍庫に奪われてしまうからです。
  • なので、冷やしていない状態で液体を凝固させるために、「過冷却」という現象を利用します。
  • 液体固体に変化する温度、その温度を「凝固点ぎょうこてん」といいます。ですが、実際に液体が凍り始める温度は、凝固点よりも低いのです。
  • 水を冷やしていくと、一旦-1℃くらいまで下がってから凍り始めます。その後、温度は0℃(凝固点)まで上昇し、凝固熱が冷凍庫に全て奪われるまで0℃を維持します。
  • この温度が一旦凝固点以下にまで下がる現象を、「過冷却かれいきゃく」といいます。

酢酸ナトリウムとエコカイロ

  • 過冷却状態は、衝撃を与えるとすぐに解除されてしまいます。衝撃によって小さな固体の結晶ができ、それを核として凝固が進んでいくのです。
  • ですが、酢酸ナトリウム(・三水和物)という、凝固点が58℃の物質は、この過冷却状態がかなり安定していて、少しの衝撃では凝固を始めません。
  • エコカイロの中には、酢酸ナトリウム水溶液と、衝撃を与えるための金具が入っています。
  • 次で、エコカイロが発熱するまでの変化を追ってみましょう。

エコカイロの仕組み

  • 上記の図のうち、①~③の過程でエコカイロを製作します
  • その後、④~⑥の過程でカイロとして動作し、⑥の状態をお湯で温めれば、再び①へ戻り、またカイロとして使えます。
  • このように、三態変化が熱の出入りだけで簡単に起こせることを利用して、何度でも再利用できるようにしたのがエコカイロなのです。

おまけ

  • 融解(固体→液体)時に外部から吸収する熱は融解熱といいます。
    熱中症の時に氷を頭の上に置くのは、融解熱によって身体の熱を奪うためです。
  • 蒸発(液体→固体)時に外部から吸収する熱は蒸発熱といいます。
    アルコール消毒をすると涼しく感じるのはアルコールが蒸発するときに、蒸発熱によって手の熱を奪うためです。
  • 凝縮(気体→液体)時に周りに放出する熱は凝縮熱といいます。
    身近なものだと、温水器の水を温めるのに使われています。(蒸気式温水製造装置)
  • 昇華(固体⇄気体)時に出入りする熱を昇華熱といいます。
  • 固体→気体の変化の時に周りから熱を吸収することを利用したものが、ドライアイスです。ドライアイスは固体から直接気体になり、その時に周りから熱を吸収します。そのため濡らしたくないものの保冷剤として用いられています。
  • 気体→固体の変化時に放出される熱はあまり利用されていません。
  • 過冷却でどこまで下がるかは状況によりますが、水の場合うまくやれば-40℃程度まで下げることもできます。