第 14 話
1999/06/06放映予定
出航・新大陸へ!
脚本
吉田玲子
演出
今沢哲男
作画監督
信実節子
美術監督
飯島由樹子

 死力をつくした戦いで、子供たちはついに宿敵デビモンを倒した。しかし力を使い果たしたエンジェモンは再びタマゴに戻ってしまう。しかもデビモンが最後に残した言葉を信じるなら、海のむこうにはデビモン以上に強力な暗黒の力をもったデジモンが存在するというのだ。新たなる戦いの予感に不安を覚える子供たち。そんな彼らの前に突然現れたのは、ゲンナイと名のる謎の老人の立体映像だった。 「サーバ大陸に来て、敵を倒してくれ。『選ばれし子供たち』ならできるはずじゃ!」 「でも、デビモンより強い敵を倒すなんて、できるはずないよ!」 「いや、おまえたちのデジモンがもう一段階、進化すればそれも可能じゃ!」  突然の申し出に戸惑う子供たちに、ゲンナイが断言する。ゲンナイは続けて子供たちの前に『タグ』の映像を映し出してみせた。 「これに、紋章をはめこめば、デジモンはさらなる進化ができるのじゃ」  思わずその言葉に聞き入る子供たち。タグと紋章が手に入れば、新しい力が……。 「それでそのタグと紋章はどこらあるんです?」 「紋章はサーバ大陸のあちこちにバラまかれてしまったんじゃ。それに、タグはデビモンがまとめてどこかに封印……」  そこまで言いかけた時、不意にゲンナイの映像にノイズが入る。 「いかん……、……モンの妨害が」 「なんだって?!」 「早く……大陸に……待って……い……る……」  そう言い残してゲンナイの立体映像はかき消えた。 「この地図が正しいとすれば、ここからかなり離れているはずです」  夕食後、ゲンナイから送られてきたサーバ大陸の地図を光子郎がパソコンの画面に映し出した。 「……行かなきゃいけないのか?」  その画面を見た丈がポツリと口を開く。ファイル島からはすでにデビモンの脅威は去った。ここにいれば水にも食べ物にも困らない。でもサーバ大陸に行けば、そこにはまた新しい敵が待っているのだ。 「おい、なんだよ! ここにいても元の世界には戻れないんだぞ!」  太一が激を飛ばしても、賛成するものは誰もいない。みんな、どうすればいいのか迷っているのだ。そんな時、すっと立ち上がったのはタケルだった。 「……行こうよ」  タケルはみんなの顔を見回して言った。 「どんな敵が待っているかわからないけど、やってみようよ! きっと、エンジェモンも、そう言うと思うんだ。だから、ぼく……」  そう言って抱きかかえたタマゴをそっとなでるタケル。その姿がみんなの心を動かした。 「……わかったよ」 「行きましょ」 「みんなが行くんなら、あたしも行く!」  口々に言い、うなずきあう子供たち。 「よーし、決まったな! サーバ大陸へ行こう!」  かくして一行は、海を越えサーバ大陸にむかうために行動を開始した。  力を合わせ、イカダ作りにはげむ子供たち。レオモン、ゆきだるモン、エレキモン……今まで出会い、戦ったデジモンたちが次々と現れて子供たちに協力する。そしてついに完成したイカダに乗り込もうとしたその時……タケルの抱くタマゴに異変が起こった。タマゴのカラにヒビが入ったのだ。続いてタマゴが割れ、中から水色のプルンとした赤ちゃんデジモン、ポヨモンが現れる。タマゴがかえったのだ! 「わーい、わーい、やったぁ!」  ポヨモンの誕生に大喜びするタケル。タケルとポヨモンを中心に、自然に拍手と歓声の輪が広がる。 「さあ、出航だ!」  小さな命の誕生が、子供たちに明るい希望を与える。子供たちは喜びの中、ファイル島とデジモンたちに別れを告げ、新たなる冒険へと旅立ったのだった。  子供たちを乗せたイカダが、帆に風を受けて大海原を進む。しかし順調に見えた航海にいきなりピンチが訪れる。黒い歯車を飲み込んで狂哩サしたクジラ型の超大型デジモン、ホエーモンが子供たちをイカダごと飲み込んでしまったのだ。子供たちは黒い歯車を取りのぞいて無事に外に出られたものの、イカダはバラバラになってしまう。ホエーモンはお詫びに子供たちをサーバ大陸に連れて行くことを約束し、さらに有力な情報を与えてくれた。ホエーモンは以前デビモンが海底洞窟に何かを隠すのを見たというのだ。  さっそくホエーモンの案内で海底洞窟にむかう子供たち。海底洞窟の奥で子供たちが見つけたのは、コンビニらしい建物だった。 「コンビニ?」  不審に思いながらもドアに手を伸ばす太一。次の瞬間、海底洞窟が突然グラグラと揺れ始めた。地面がボコボコと盛り上がり、鋭いドリルが回転しながら飛び出してくる。深い土の中にすむモグラ型のデジモン・ドリモゲモンだ! 「デビモン様の命により、ここには誰も立ち入らせない! おまえたち、出て行け!」  子供たちをにらみつけるドリモゲモンの背中には、最後の黒い歯車が突き刺さっている。 「太一! ここはぼくたちにまかせて、タグを探して!」 「わかった!」  アグモンたちに後を任せ、コンビニに突入しようとする太一たち。しかしドリモゲモンもそうはさせるかと襲いかかる。危ないところで太一とドリモゲモンの間に割って入ったのは、イッカクモンに進化したゴマモンだった。 「オイラのツノの方がすごいやい!」  ドリモゲモンの突進を正面から受け止めるイッカクモン。イッカクモンのツノとドリモゲモンのドリルが激しくぶつかり合う。二匹はそのままドアを破ってコンビニの中になだれこんだ。 「次はオレが相手だ! ガブモン進化、ガルルモン!」 「いいぞ、ガルルモン! さぁ、ボクたちも行くぞ! アグモン進化、グレイモン!」 「テントモン進化、カブテリモン!」  アグモン、ガブモン、テントモンも次々進化してイッカクモンに加勢する。 「こいつら~~~! みんな、粉々にしてやる! ドリルスピン!」  負けじと必殺技のドリルスピンを繰り出すドリモゲモン。高速回転するドリルがグレイモンたちを弾き飛ばす。 「グレイモン、黒い歯車を狙え!」 「わかってる! カブテリモン、行くぞ! メガフレイム!」 「メガブラスター!」  太一の指示を受け、必殺技を放つグレイモンとカブテリモン。ふたつの必殺技が同時に直撃し、黒い歯車は粉々に砕け散る! 「す、すいませんでした~~~」  黒い歯車から解放されてすっかり気弱になったドリモゲモンは、タグの隠し場所も助ェに説明しないまま逃げていった。 「仕方ない。店ン中、探そうぜ」  気を取り直してコンビニの中を探し始める子供たち。でもドリモゲモンとの戦いのせいでコンビニの中はメチャメチャ。ダクはなかなか見つからない。 「ない~~~」  イヤになったミミがペタリと床にへたり込む。他のみんなも疲れてきたその時、ポヨモンが不意にタケルから離れてくずれた壁の穴に入りこんだ。 「ポヨモン! そんなとこ入っちゃだめだよ!」  タケルが慌てて穴の中をのぞきこむ。その目に映ったのは、小さな宝石箱に抱きつくポヨモンの姿だった。宝石箱を開けてみると、中には……。 「タグだ!」  それはまさしくゲンナイが映像で見せたのと同じタグだった。  こうしてタグを手に入れた子供たちは、ホエーモンの背に乗って再び新大陸を目指し始めた。それぞれの首には、もちろん海底洞窟で手に入れたタグがぶら下がっている。 「このタグと紋章の二つが合わされば、ボクたちはさらに進化できるんだよね」 「ああ! 紋章も必ず探し出すぞ!」  アグモンの言葉に太一は力強くうなずいた。子供たちを乗せたホエーモンは、陽の傾きはじめた海原をゆうぜんと進み続ける。新たなる敵、そして新たなる冒険が待つサーバ大陸を目指して……。

○要チェック! 光子郎の心の師匠(?)ゲンナイ初登場 サーバ大陸への新たなる旅立ち
○登場デジモン アグモン→グレイモン  ピヨモン  ガブモン→ガルルモン テントモン→カブテリモン  パルモン  ゴマモン→イッカクモン  パタモン
ドリモゲモン
進化段階:成熟期・B
必 殺 技:ドリルスピン
いつも地中深くにいるモグラデジモンで、必殺技は鼻先についた巨大なドリルを高速回転させて攻撃するドリルスピン。本来はおとなしくてはずかしがり屋だが、黒い歯車の力でデビモンの部下になってタグを守っていた。

ホエーモン
進化段階:成熟期・B
必 殺 技:ジェットアロー
深海に住むクジラ型の超巨大デジモン。必殺技は強烈な潮を吹き出すジェットアロー。最初は黒い歯車に操られて子供たちを攻撃したが、正気に戻ってからは何かと協力してくれるようになる。
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(C)本郷あきよし・東映アニメーション