デビモンの力で飛ばされたタケルとパタモンは、みんなとはぐれて二人きりになってしまった。ヤマトのことを想って泣き出すタケルを見て、悲しみをつのらせるパタモン。もし自分がピヨモンなら、バードラモンに進化してタケルをヤマトのところに連れて行ってあげられるのに……。 「なのにボクは……どうして……どうして進化できないんだ」 何もできない悲しみのあまり、タケルと一緒に泣き出してしまうパタモン。おどろいて泣き止んだタケルはパタモンが進化した姿をあれこれ想像し始めるが……すべてカッコ悪くてイヤなデジモンばっかり。 「もういい、やめて! 想像するのもやだ。いいの、ボク、進化なんかしないもーん」 タケルのあまりにひどい想像にすっかり気を悪くしたパタモンが、ムキになって宣言する。しかしそんな二人がたどり着いたのは、皮肉にもデジモンたちが生まれ進化する「はじまりの町」だった。 まわりを生け垣にかこまれた緑あふれる町。久しぶりに見た穏やかな景色にはしゃぎまわるタケルが見つけたのは、ゆりかごの中で眠る赤ちゃんデジモンだった。ボタモン、プニモン、ユラモン、ポヨモン……さまざまなデジモンの赤ちゃんを見て感動するタケルとパタモン。でもその内に赤ちゃんたちが泣き出してしまい、ごはんやウンチの世話で走り回されることに。なれない作業で大わらわのタケルとパタモン。しかも食料調達から戻ってきた赤ちゃんデジモンたちの世話係・エレキモンが二人を赤ちゃんたちをいじめる悪者と勘違いして攻撃してきたから、騒ぎはさらに大きくなってしまう。 「何するんだ、危ないじゃないか!」 「うちのベビーたちをかわいがってくれたからさ」 にらみ合い、ケンカを始めるパタモンとエレキモン。怯えながら二人の様子を見守る赤ちゃんデジモンたち。二人の戦いがますます激しくなろうとしたその時……。 「やめてー!」 思わずシンとなって争いをやめるパタモンとエレキモン。二人を止めたのは、タケルの心からの叫びだった。 「やめてよ、二人とも。ケンカはよくない。ベビーたちも怖がってるじゃないか」 タケルの真剣な訴えに我に返って反省するパタモンとエレキモン。しかしお互いのわだかまりは、そう簡単には消せるものではない。そこで決着を望む二人のためにタケルが考え出したのが、次のような迷案(?)だった。 カンカンカン。あたりに拍子木の音が響く。 「東~ぃ、エレキの海」 「西~ぃ、パタの山」 すもうの行司の格好をしたタケルの前で向かい合うパタモンとエレキモン。 「両者、見合って! はっけよーい、のこった!」 タケルの掛け声と同時に足元の綱を口にくわえるパタモンとエレキモン。そして始まったのは……真剣勝負の綱引きだ。ひとまわり大きな体で力任せに綱を引っ張るエレキモンに対して、重心を低くして必死に持ちこたえるパタモン。タイミングをはかって一気に綱を引き戻す! 「パタの山の勝ち~」 タケルが軍配を西に上げる。パタモンの逆転勝利だ! 「どう? もう一回やる? 君の気が済むまで何度でもやっていいよ」 「けっ。見損なうない。負けは負けだ」 お互いに笑顔を交わし、握手をするパタモンとエレキモン。誤解をといて仲直りした二人の姿に、赤ちゃんデジモンたちも嬉しそうに拍手した。 そしてさらに嬉しいことは続く。赤ちゃんデジモンのボタモンが、タケルたちの目の前でコロモンに進化したのだ。歓声を上げ、全員で祝福するタケルたち。でも喜びの輪の中で、ひとりパタモンだけは思いつめた顔をしていた。自分が進化した後も、タケルとずっと友達でいられるか不安だったのだ。 「やっぱ、君も進化したいの?」 そんなパタモンの気持ちに気づいたかのようにタケルが尋ねる。 「そ、そんなことないよ。ボクはこのままでいい。ずっとこの姿のまま、君のそばにいる!」 「うん! 約束だよ。ボクたち、ずっと友達だからね!」 笑顔で約束するタケルとパタモン。しかし、このとき二人はまだ知るよしもなかった。悲しい別れが二人のすぐ足元にまで忍び寄っていることを……。
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