デビモンの力で仲間とはなればなれになってしまった空は、食料を手に入れるためにピヨモンと海辺で釣糸を垂れていた。しかしその針にかかったのは……なんと丈とゴマモンだった! 霧の海を漂流しているところをオーガモンに襲われ、危うくおぼれそうになった二人を運よく空たちが助けたのだ。意識を取り戻したゴマモンは、まだ気を失ったままの丈を横目に空たちにあるお願いをする。デビモンの強大な力を見て気弱になった丈に自信をつけさせるために、丈をこの場のリーダーにしてしまおうというのだ。 「丈先輩がリーダーよ!」 ゴマモンの作戦どおり、目を覚ました丈にいきなり宣言する空。ピヨモンとゴマモンもその後に続いてよってたかって丈をリーダーに推薦する。 「わかった、ぼくがリーダーになる」 突然のことに戸惑いながらも、その気にさせられてリーダーを引き受ける丈。次の瞬間、まるで丈を祝うかのように教会の鐘の音が響き、島をおおっていた霧が晴れた。 「鐘が鳴ったということは……あの教会に人間がいる!」 霧の中から現れた教会を見て、急にはりきりだす丈。 「そう信じるのは勝手だけど……」 いまいち疑問を感じながらも、仕方なく丈の意見に従う空。かくして丈をリーダーにした一行は、ちょっぴり不安をかかえつつ丘の上にある教会に向かって歩き出したのだった。 おそるおそる扉のすきまから教会の中をのぞき見る丈の目に映ったのは、仮面をつけて踊る村人の姿だった。不思議がる丈たちの耳に突然男の声が響く。 「バケモン様にお供え物するカーニバルです」 思わず飛び上がる丈たち。そこに立っていたのは怪しげな仮面をつけた牧師だった。村では今、バケモン様のために祭を行っている最中なのだという。すっかり安心して教会の中に案内される丈のとなりでひとり納得のいかないゴマモン。ゴマモンの記憶では、バケモンは墓地に住む幽霊デジモンで、とても『様』をつけてお供え物をするようなデジモンではなかったのだ。しかも肝心のバケモン様にささげるお供え物もどこにも見えない。 「みつぎ物ってどこにあるの? どこにも見当たらないけど……」 不思議そうにまわりを見回す空に、仮面の牧師が不意にすごんだ声を出す。 「バケモン様のお供え物は……お前たちじゃっ!」 牧師のかけ声と同時に、村人がいっせいに仮面を取る。その下から現れたのは……バケモンだ! 教会は一瞬でボロボロの廃虚に変わり、いつのまにかあたりも不気味な墓地になってしまている。すべてはバケモンたちが仕組んだワナだったのだ。襲いかかるバケモンたちを相手にゴマモンとピヨモンも必死で応戦するが、疲れと空腹で進化できない。結局全員がバケモンに捕まり、ゴマモンとピヨモンは地下牢に、丈と空は礼拝堂へと別々の場所に連れて行かれてしまったのだった。 連れて行かれた礼拝堂で、お供え物として祭壇の上に寝かされる丈と空。 「あ~~やっぱりキャンプに来ないで受験勉強していればよかった~~」 再び弱気の虫が顔を出し、泣き言を言い始める丈。あげくにどちらが先に食べられるかで空と言い争いを始めてしまう。 「ぼっ、ぼくの魂は不味い!」 「何よ、私の方が美味しいって言うの?」 「美味しい!」 「丈先輩、それでもリーダー?」 内輪もめを続ける丈たちをよそに、バケモンたちは着々と儀式を進めていく。 「そろそろバケモン様をお呼びしましょう」 怪しげな呪文とともにひとつに集まり始めるバケモンたち。そして現れたのは……。 「バケモン様~~~」 バケモンたちが合体して誕生した巨大バケモンだ! 巨大バケモンが祭壇から丈をつかみ上げて大きく口を開ける。まさに絶体絶命のその瞬間……礼拝堂の床を破ってイッカクモンが現れた! その後にはバードラモンの姿も続く。見張りのバケモンのスキを見て地下牢を抜け出したゴマモンとピヨモンが、丈と空のピンチに進化して駆けつけたのだ。 コンビを組んで巨大バケモンに立ち向かうイッカクモンとバードラモン。しかし優勢かと思ったもつかの間、逆に追いつめられてしまう。巨大バケモンにはいっさいの攻撃が通用しなかったのだ! 「バケモン様……思っていたより強い……」 思わぬ苦戦に打つ手のない空。そんな時にリーダーらしく逆転の秘策をあみだしたのは、他ならぬ丈だった。それは……。 「ありがたいお経のご利益でバケモン様のパワーを弱くするんだ!」 田舎のおばあちゃんに教えてもらったというお経を、自信たっぷりにとなえ始める丈。 「木魚!」 「はっ、はい!」 最初はあきれて見ていた空も、丈の異様な迫力に押されて帽子を木魚がわりにポクポクと叩き始める。すると驚いたことに、巨大バケモンが本当に苦しみ出したのだ! 「今だっ!」 丈のかけ声と同時にいっせい攻撃をしかけるイッカクモンとバードラモン。まともに必殺技を浴びた巨大バケモンは絶叫と共に消滅した。 「勝ったー」 大喜びの丈。 「……なんだかわからないけどすごい……」 あまりの結果に呆然と立ち尽くす空。お経パワーのご利益を得た(?)一行は、イッカクモンの勝利の遠吠えも高らかに、はるか海の向こうのムゲンマウンテンに進路を向けたのだった。
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