エア・ギア 制作スタッフインタビュー


CHECK IT ザ・トリックパース!

今回は美術担当の飯島由樹子とCGテクニカルディレクター・猪原英史のお二人をフィーチャーしたこのコーナー。
アニメ『エア・ギア』の世界観を支える究極のトリック[技]がここにある!

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VOL.06
  美術担当 飯島由樹子
CGテクニカルディレクター 猪原英史
PhotoQ:『エア・ギア』の原作をご覧になった感想は?

飯島:私は去年あたりまでの主な仕事が、『ふたりはプリキュア』シリーズなど少女もの、女児ものが中心で、正統派の少年漫画に触れるのは久しぶりでした。それだけに気持ちの切り替えは必要だったんですが、内容的にはとても面白い作品でしたね。この仕事を受けて一番よろこんでいたのは、原作を読んでハマったスタッフたちだったみたいです。それから緻密なディテール描写もそうですが、やはり暴力もお色気描写もそれなりにある作品だな、というのは感じましたね。

Q:亀垣監督は、アニメではチーム戦や仲間との絆といった少年漫画の王道を重視する方向にうまくシフトされていましたね。

飯島:はたしてこの原作をどこまで映像化できるか?放送コード的にも結構ギリギリなんじゃないかと正直、心配したんですよ(笑)。

猪原:僕も本格的に原作を読みだしたのはこのお仕事が決まってからだったんですが、読み始めたらハマってしまって、その日はついスタジオに泊まり込んで徹夜で読破しました。それでも翌日、続きが待ち遠しくて残りのコミックスを自腹で買ってました(笑)。SFやファンタジー風の舞台にスーパーヒーローが登場するような作品が多いなかで、『エア・ギア』では読者の共感を呼ぶような、等身大のキャラクターが描かれているのが印象的でした。ストーリーの内容以外にも、原作者の大暮維人先生の設定やキャラメイキングのうまさが引き立ってましたね。

Q:『エア・ギア』の本編中で表現上、特に注意を払われた点は?

飯島:ストーリー一つとっても、またキャラや背景も、大暮維人先生はさまざまなディテールを突きつめて表現されてますよね。その緻密さはある意味ショックですし、だからこそアニメ的なディテールの端折りかたが通用しない作品だな、というのは感じました。それに対応する方法が、徹底的にロケハン(取材)を重ねることでした。とにかく背景美術に使えそうな風景は、スタッフを総動員して可能な限り写真に収めて、作画時にはその資料に則してリアリティを追求してきました。

PhotoQ:町並みのほかにも、東雲町の河原や土手、それから町を疾走するオープニングなどでリアリティが活かされてますよね。

飯島:美術のほとんどは取材、参考写真の賜物ですね。作画の際、編集部側つまり原作者サイドの方にうかがったのですが、『エア・ギア』の舞台は各アシスタントさんの出身地をモデルに合成した土地だ、というお話でした。確か由比ガ浜と横浜、それに町田だったと思います。だから東雲町の、高台の上に住宅街があって坂から見下ろすと都心が見えるといったロケーションを描くために、関東近辺で行ける場所はひと通り取材したんですよ。

猪原:等身大のキャラが活躍する『エア・ギア』という作品に対して、CGのほうではキャラや世界観のリアリズムとは、別の方向性のリアリティを受け持ちました。たとえばエア・トレックの部品の実在しそうな質感とか、町並みや学校といった風景の奥行き感ですね。もちろん単なるリアルさを見せるだけではなくて、それこそ飯島さんが描かれる美術の「絵としての美しさ」に、よりリアリティを増すためのデジタル効果を加えられるか、そういったバランス調整はすごく難しい作品です。

Q:亀垣監督も「どうやってエア・トレックを動かしたらいいか?」で苦労されてました。

猪原:あのシューズは超小型原子炉を搭載しているとかいうハイテクメカじゃなくて、実在するインラインスケートの延長発展形で「何年後かには実現してそう」なアイテムですよね。だから内部機構の設定をする際には、自動車のギア構成にはじまって、電磁コイルのトルクで動く実物の機械の構造など、いろいろそれらしいメカニックを調べて参考にしたんです。外見上はハイテクの集合だけど、破綻なくきちんと動くという雰囲気を再現するのが、またひと苦労でした。1話の冒頭でワイヤーフレームの中からパーツが組み上がってエア・トレックができるシーンがあるんですけど、一見気づきにくいとは思いますが、実際に動かしてみても「これならアリだろう」と感じられるような構造にしてあります。

飯島:それから苦労といえば、イッキたちのアパートの美術設定ですね。これは参考になる物件がなかったので、原作から抽出しました。ところが原作中でも間取りが一定でないことがあって、結構困りました(笑)。特にお風呂のスペース。当初は監督やプロデューサーと相談して、浴室は離れの別棟に作ってはどうかと提案したんですが、原作者サイドからは「同じ棟に」というリクエストがきました。最終的に廊下の一番奥を浴室にしたんですが、真正面に扉を作るわけにはいかなかったので、旅館のお風呂のように奥から少し折れた位置に扉を作りました。こういったリアリティと設定上のフィクションの辻褄合わせは、今も現在進行形で続く作業になりますね。