スタプラ! star plus one

『スタプラ!』キャラクターエピソード

篠之森真夜 前編

星華(せいか)学院。
世界的に有名な芸能学校であるここでは、芸能部とマネジメント部の生徒同士が「相棒(バディ)」になるのがルール。
だが、相棒はいまだ見つからずにいた。
かつては芸能部で将来を嘱望されていたが、ケガのためにマネジメント部に編入になって以来、夢を見失って腐っていたのだ。

屋上から眺める校庭では、二人組がレッスンに励む様子も見える。
これからどうしよう。
沈んだ気持ちで考えていると、学院長室に来るよう、校内放送で呼び出しがかかった。
出向いてみると、

学院長
「おお、来たか。確か君は、まだバディを決めていなかったな」

前置きもそこそこに、学院長はよくわからないことを言いだした。

学院長
「ところで君、魔界のことには詳しいかね?」

……は?

学院長
「実は少々、困っておってのう」

そう言って指さした戸棚が、突然、カタカタと揺れはじめた!

戸棚
「ククククク……汝が魔界より我を召喚せんとする命知らずか」
学院長
「芸能コースの篠之森真夜君だ」
戸棚
「フッ、それは世を忍ぶ仮の姿。我が名はクランリアーナ、漆黒の闇を統べる黒魔導師!」
学院長
「いつまでも恥ずかしがっておらず、出てきてはどうじゃね」
戸棚
「わ、私は恥ずかしがってなど……」
学院長
「知っておろうが。バディを見つけられぬ者は退学が規則。きみも例外ではないのだぞ」
戸棚
「うぅ……」
学院長
「どうだね、少々変わり者だが、篠之森君をバディにしては……」
戸棚
「フーハハハハハ! 輪廻の縁なき者に、我を召喚することは出来ぬ!」

ふと見ると、テーブルの上に、髑髏のアクセサリーがついたスマートフォンがあった。
ログインしっぱなしのネットゲームの画面が表示されている。
キャラクター名は"黒魔導師クランリアーナ"。

学院長
「ん? 篠之森君の電話かね」

そう言った途端、
——ガラッ!

真夜
「ぁ……あっ……!」

戸を開けて飛び出してきた真夜は、すがるような涙目でおどおどしている。

真夜
「……か、返し、て……」

可哀想になってスマートフォンを返してやると、大慌てで操作し始める。

真夜
「み、見られた…絶対……うぅ……」
学院長
「ふむ。召喚成功じゃな」

かくして余り者同士、バディになることになったのだ。
それが、篠之森真夜との出会いだった。

普段の真夜は、毎日一人でゲームとネット漬け。
某巨大掲示板では超強気なくせに、現実では満足に他人とコミュニケーションを取ることさえかなわない。
しかも、いわゆる中二病というやつだ。

真夜
「灼かれよ……地獄の業火に灼かれるのだ……」
十萌
「真夜ちゃん、スマートフォンを見られて怒ってるのはわかりますけど、バディさんの背後にぴったりくっついて、ブツブツ言うのはやめた方が……」

春野十萌も、いささか呆れ顔。
十萌さんは何かとみんなの世話を焼いてくれる、学院の事務員見習いだ。

十萌
「ところで二人とも、もう連絡先の交換は済みましたか?」
真夜
「(れっ、連絡先の交換!?)」

真夜は急に真っ赤になって、

真夜
「はははは、破廉恥な!」
十萌
「お互いのメアド、十萌がメールで送ってあげますね」

十萌さんからのメールには、アドレスと一緒に、こんなことが書かれていた。

【十萌のひみつ情報!】
真夜ちゃんは『フェイシャルファンタジー』って言う、ネットゲームに夢中らしいです。
バディさんもプレイしてみれば、気持ちが通じ合うかもしれませんよ♪

女子生徒
「何あれ……?」
男子生徒
「新手のストーカーかな?」

真夜はどこへ行くにも、ぴたりと背後について来る。
相変わらずブツブツと文句を言っているが、意外と寂しがり屋なのかもしれない。
そこに、上保光貴が現れた。

光貴
「おやおや、どこのバカかと思ったら、お前だったのか」

光貴とはかつて、芸能部で競い合うライバル同士だった。

ライバルと言っても、オーディションの結果を、裕福な実家のお金で買おうとするような男だ。どうしたってこちらに勝てない苛立ちが、いつしか憎しみに変わり、こちらがマネジメント部に移ってからは自分も転籍。毎日のように嘲笑を浴びせてきては、学院から追い出そうとあの手この手を尽くしてくるのだ。

光貴
「バディどころか友達ひとり作れない、気味が悪いオタク女と組むとは、ずいぶんと落ちぶれたものだな」
真夜
「ハアアアアーーーッ!キュピーン!!!」
光貴
「!?」
真夜
「貴様の負けだ小悪党。アンチスペルで不愉快極まる呪文は封じた」
光貴
「な、なんだ、コイツ。意味はよくわからんが、ちょっとカッコイイじゃないか……」
真夜
「学院内の誰からも遠ざけられた挙げ句、魂を持たぬ自動人形と組むとは、貴様こそ落ちぶれているのではないか?」

篠之森真夜

黒魔導師クランリアーナが"降りて"くると、真夜はこうして、現実の世界でも強気になるのだ。

光貴
「ファ、ファルセットをバカにするな! パパに頼んで作ってもらった、僕の大事なバディなんだぞ!」
真夜
「……フン!」
光貴
「くそぅ、ならばひとつ、勝負をしようじゃないか! 近く行われる文化祭のスペシャルステージで、勝った方が負けた方に何でもひとつ命令するというのはどうだ?」
真夜
「人間風情が面白い。良かろう、その勝負、クランリアーナが受けて立つ!」

野次馬たちが「おお〜」と、どよめく。
そんなわけで、自信満々でケンカを買ったはいいものの、元に戻れば案の定、真夜はいつも以上に対人恐怖症な様子。
すぐ後ろを歩いているのに、わざわざ携帯にメールを送ってくる。

【件名:昨日の件】
本文:どうしよう……

【件名:昨日の件2】
本文:本気で対決する気?

真夜はイヤなのか?と訊くと、

【件名:昨日の件3】
本文:そのために学外を出歩いてレッスンなど、まるでリア充ではないか!!!

どうしたら現実世界でも、ゲームやネットの中でのように自信を持ってくれるだろう。
困り切って開いたのは、『フェイシャルファンタジー』のログイン画面だった。

篠之森真夜 後編につづく

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