『スタプラ!』キャラクターエピソード
星華(せいか)学院。
世界的に有名な芸能学校であるここでは、芸能部とマネジメント部の生徒同士が「相棒(バディ)」になるのがルール。
だが、相棒はいまだ見つからずにいた。
かつては芸能部で将来を嘱望されていたが、ケガのためにマネジメント部に編入になって以来、夢を見失って腐っていたのだ。
屋上から眺める校庭では、二人組がレッスンに励む様子も見える。
これからどうしよう。
沈んだ気持ちで考えていると、学院長室に来るよう、校内放送で呼び出しがかかった。
出向いてみると、
前置きもそこそこに、学院長はよくわからないことを言いだした。
……は?
そう言って指さした戸棚が、突然、カタカタと揺れはじめた!
ふと見ると、テーブルの上に、髑髏のアクセサリーがついたスマートフォンがあった。
ログインしっぱなしのネットゲームの画面が表示されている。
キャラクター名は"黒魔導師クランリアーナ"。
そう言った途端、
——ガラッ!
戸を開けて飛び出してきた真夜は、すがるような涙目でおどおどしている。
可哀想になってスマートフォンを返してやると、大慌てで操作し始める。
かくして余り者同士、バディになることになったのだ。
それが、篠之森真夜との出会いだった。
普段の真夜は、毎日一人でゲームとネット漬け。
某巨大掲示板では超強気なくせに、現実では満足に他人とコミュニケーションを取ることさえかなわない。
しかも、いわゆる中二病というやつだ。
春野十萌も、いささか呆れ顔。
十萌さんは何かとみんなの世話を焼いてくれる、学院の事務員見習いだ。
真夜は急に真っ赤になって、
十萌さんからのメールには、アドレスと一緒に、こんなことが書かれていた。
【十萌のひみつ情報!】
真夜ちゃんは『フェイシャルファンタジー』って言う、ネットゲームに夢中らしいです。
バディさんもプレイしてみれば、気持ちが通じ合うかもしれませんよ♪
真夜はどこへ行くにも、ぴたりと背後について来る。
相変わらずブツブツと文句を言っているが、意外と寂しがり屋なのかもしれない。
そこに、上保光貴が現れた。
光貴とはかつて、芸能部で競い合うライバル同士だった。
ライバルと言っても、オーディションの結果を、裕福な実家のお金で買おうとするような男だ。どうしたってこちらに勝てない苛立ちが、いつしか憎しみに変わり、こちらがマネジメント部に移ってからは自分も転籍。毎日のように嘲笑を浴びせてきては、学院から追い出そうとあの手この手を尽くしてくるのだ。
黒魔導師クランリアーナが"降りて"くると、真夜はこうして、現実の世界でも強気になるのだ。
野次馬たちが「おお〜」と、どよめく。
そんなわけで、自信満々でケンカを買ったはいいものの、元に戻れば案の定、真夜はいつも以上に対人恐怖症な様子。
すぐ後ろを歩いているのに、わざわざ携帯にメールを送ってくる。
【件名:昨日の件】
本文:どうしよう……
【件名:昨日の件2】
本文:本気で対決する気?
真夜はイヤなのか?と訊くと、
【件名:昨日の件3】
本文:そのために学外を出歩いてレッスンなど、まるでリア充ではないか!!!
どうしたら現実世界でも、ゲームやネットの中でのように自信を持ってくれるだろう。
困り切って開いたのは、『フェイシャルファンタジー』のログイン画面だった。
篠之森真夜 後編につづく