『スタプラ!』キャラクターエピソード
真白エリス 後編
イベントまでの間は、レッスン漬けの毎日だ。
話を聞きつけた十萌さんも、移動に便利な地図をくれたり、何かとサポートしてくれる。
- 十萌
- 「二人とも、上保くんと競争するそうじゃないですか。レッスン、もっともっと頑張らなきゃですね!」
商店街の人たちも、みんな応援してくれる。
そしていよいよ、イベントがはじまった!
*
アーケードに設置されたステージいっぱいを使って、エリスは躍動する。
詰めかけたお客さんたちも、大盛り上がりだ。
お手製の応援プラカードまで作ってくれた八百屋のおばさん。
サイリウムを振っている喫茶店のオーナー。
にこにこ笑いながら手拍子をしている、顔なじみのおばあさん。
ところが――
- 光貴
- 「生活用品から歌声まで、最高級の品揃え! セレブによるセレブのためのショッピングセンター・ウワボパーク、ただいまより開店記念セールとライブイベントを開催します! ぜひ、お立ち寄りください!」
そして響きはじめた歌声は、悔しいが、エリスのよりも遙かに美しく澄んでいた。
お客さんがどんどん離れていく。
エリスは何とか最後までパフォーマンスを終えたが、残った商店街の人たちに慰められてもなお、いつになく肩を落としていた。
*
今日も学院での厳しいレッスンが終わる。
- エリス
- 「お腹すいた~。ねえねえ、気分転換に、おいしい物をお腹いっぱい食べに行こうよぉ~」
- 十萌
- 「ピッピー! イエローカードです! アイドルのたまごに食べ過ぎは禁物なのですよ。十萌が一緒に行って、食べてあげるのです!」
三人で行ったレストランで事件は起きた。
- お客さんA
- 「なあ、この前の商店街のイベント、真白エリスって子が歌ってるの見たか?」
- お客さんB
- お客さんB「あの子、素質はあるけど大成できないタイプって感じだよな。アイドルに憧れてる子が、まねごとをしてるだけっていうか……」
- エリス
- 「……」
- 十萌
- 「エリスちゃん? 色んなことを言う人がいますから、気にしなくても……」
- エリス
- 「わたし、先に帰るね」
*
翌日、エリスはレッスンに現れなかった。
十萌さんにも連絡が取れないらしい。
探し回った挙げ句、見つかったのは、小さなお墓の前だった。
- エリス
- 「勝手にいなくなってごめんなさい!」
エリスは説明してくれた。
お参りをしていたこのお墓は、亡くなったおばあちゃんのものであること。
小さな頃、大好きなおばあちゃんを喜ばせたくてアイドルを目指しはじめたこと。
- エリス
- 「頭の中がわーってなっちゃって、おばあちゃんに相談しに来たんだけど、叱られちゃった気がした。あなたの夢は、おばあちゃんを喜ばせるためだけのものなの? 今は応援してくれる沢山の人がいるんだから、その人たちのために頑張らなきゃダメなんじゃないの?って」
エリスのまなざしは、どこまでもまっすぐだった。
- エリス
- 「わたし、やっぱり、夢いっぱい笑顔いっぱいのアイドルになりたい!」
*
後日――
- エリス
- 「バディさん、大ニュースだよ! 今年の文化祭のステージでグランプリになると、全国デビューができるんだって! オーディションを受けて出場して、絶対にグランプリを取ろうね!」
- ファルセット
- 「それは無理」
- エリス
- 「あなたは?」
- ファルセット
- 「わたしはファルセットver.1.0、光貴さまの忠実なるアンドロイド」
- エリス
- 「光貴さま……上保くんのバディなんだ!」
- ファルセット
- 「グランプリは私です。計算によると、確率は99.7%。不完全な人間であるあなたには不可能かと思われます」
様々な面で人間よりも優れた力を持つファルセットは、とてつもない強敵になるだろう。
ところが、エリスは満面の笑みを浮かべて言った。
- エリス
- 「100から99.7を引くと、えと……0.3%! 0.1の3倍も可能性があるんだ! わたし、全力で頑張ってみるよ!」
*
オーディションは見事に合格! エリスの文化祭ステージへの出場が決定した!
- 光貴
- 「ふん、どうせステージでは、誰にも注目されないと言うのに」
エリスは、同じように合格したファルセットと握手する。
- エリス
- 「一緒に最高の文化祭にしようね!」
- ファルセット
- 「……」
*
そしていよいよ、文化祭のステージがはじまった。
完璧な歌声とパフォーマンスで観客を魅了するファルセット。
エリスは完璧ではないが、ファルセットとは大きく違っているところがある。
商店街の人たちをはじめ、応援してくれるみんなと共に、会場全体を盛り上げようとするのだ。
- エリス
- 「一緒に最高の文化祭にしようねーーーっ!」
みんなの力は一人の力を超えていく。
そして、奇跡が起きた。
- 審査員
- 「グランプリは、真白エリスちゃんです!」
アンコールの声は鳴り止まない。
- エリス
- 「バディさん、トロフィー持ってるんだし、隣に立ってて。大切なバディさんだけの特等席だよ!」
*
- エリス
- 「やったよバディさん、全国デビュー! 学院から認められて、本当のアイドルとして全国を飛び回ることになったの。そうやって経験を積むんだって。それでね、よかったら、これからも私と一緒にいてほしいの。だって、他の誰より大切な、わたしの最高のバディさんなんだもん……ダメかな?」
ダメなものか、腐っていた自分にやっとできた新しい夢なのだ。
エリスの夢は自分の夢だ。
笑顔いっぱい夢いっぱいのアイドルになれるよう、いつまでも相棒として支え続けてあげよう。
- エリス
- 「えへへ、これからもよろしくね♪」
真白エリス編・おわり
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