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[2012年3月号] 美濃竹紙工房 文/取材:木南 有美子

美濃和紙のこと

雨水の時節に、東京から東海道新幹線で名古屋、名古屋から東海道本線岐阜駅、そして岐阜高速バスに乗って美濃まで行く。これが時間をかけずに美濃に行く方法のひとつだそうだ。

岐阜県は、日本列島の丁度真ん中、関東関西の文化が交差する場所でもある。ゆったりと流れる長良川の支流、板取川周辺に美濃和紙の漉屋が集まる蕨生地区がある。今では本美濃紙を作っている漉屋は2軒、そのうちの1軒、美濃竹紙工房(当主は11代目)を訪ねた。

美濃は、日本三大和紙生産地のひとつとしてゆるぎない評価を受けている。平安時代の延喜式においても我が国を代表する生産地と記されており、正倉院に現存している大宝2 (702) 年 美濃国の戸籍用紙は漉きむらが無く、他の諸国の和紙より秀逸な技術が当時からあったことを証明している。京の都からも近く、安土桃山時代には表舞台となった地域である。長良川の流れが行き着く先は尾張徳川家が統治しており、中央政権に直結していた。徳川家の御用紙として一定した需要があったこと、長良川を利用して運搬が出来たこと、意識の高い使い手が良い紙を求めたであろうことから、クオリティーの高い和紙を伝統的な製法で作り続けて今に至っている。
美濃紙は、江戸時代には最上の御用紙と賞され、明治時代には高級な障子紙―書院紙―と呼ばれて用いられた。一般に、障子紙は日光に透かして鑑賞されるため、繊維にムラが無く、整然と美しく漉き上げられていなければならない。この美濃紙は、地合いに透明感と光沢があるのが特徴だ。

伝統を受継いだ美濃紙の製造技法を保存するため、とりわけ障子紙の製造技法を「本美濃紙」として、昭和51(1976)年、国の重要無形文化財(保持団体:本美濃紙保存会)に認定された。
下記の条件をクリアした和紙を「本美濃紙」という。

  • 1:原料は楮のみであること
  • 2:伝統的な製法と製紙用具によること
    • 1 白皮作業を行ない、煮熟には草木灰またはソーダ灰を使用すること
    • 2 薬品漂白を行わず填料を紙料に添加しないこと
    • 3 叩解は手打ちまたはこれに準じた方法で行うこと
    • 4 抄造は「ねり」にとろろあおいを用い、「かぎつけ」または、「そぎつけ」の竹簀による流し漉きであること
    • 5 板干しによる乾燥であること
  • 3:伝統的な本美濃紙の色沢、地合等の特質を保持すること
  • ―認定証原文のとおり―

原材料の楮は茨城県産の那須楮(国内産楮のみ)を使用している。那須楮の繊維は比較的細くて短く、日本で最高品質と言われており、温かみのある緻密な肌を持った品格のある美しい紙が出来る。
今回訪問した美濃竹紙工房職人、鈴木豊美さんのお話によると、和紙には紙を漉いている人そのものが現れてくるという。だから、一枚たりとも気を抜いて紙を漉くことは出来ないのだろう。

参考文献:
かみのしごと―和紙の里・美濃の話―/かみのしごとプロジェクト発行/2004年12月
美濃紙の今―作り手達の素顔―/大滝國義発行/1996年3月

美濃竹紙工房

岐阜県美濃市蕨生1806

>美濃手すき和紙協同組合

http://www.chuokai-gifu.or.jp/kamiren/tesuki/

「楽園追放」ティザーサイト

映画製作においてポスターを作ります。『楽園追放』のポスター(東京国際アニメフェア2012にて展示)は、本美濃紙を使用し、大日本印刷株式会社さんにより印刷されたものです。

http://www.toei-anim.co.jp/movie/EFP/

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